~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~
confeito(こんぺいとー)降園
デュオ×カトル
保育士カトルとデュオさんの物語その2です。
デュオさんとカトルの関係はどうなるのか。
本文を読むからどうぞ、読んでやってくださいねv
デュオ×カトル
保育士カトルとデュオさんの物語その2です。
デュオさんとカトルの関係はどうなるのか。
本文を読むからどうぞ、読んでやってくださいねv
confeito(こんぺいとう)降園
「せんせい、さよ~ならぁ」
「さようなら、気をつけてね」
大きな声であいさつをして、園児が母親に手を引かれて帰っていく。
高い山と小さな山、影は一つにつながった。
子供からすれば高い位置にある母の手を、しっかりと握る姿は、なんてけなげなんだろう。見送るカトルの瞳も自然と細められていた。
これで、ここに残る子供はアイン一人になってしまった。
手をつないで一緒にお見送りをしていたアインと、目線が同じになるようカトルは身を屈めた。
「アインのお父さんも、もうすぐお迎えに来てくれるからね。先生とお絵描きをして待ってよう」
しかし、何が気に入らないのか、アインはぷいっとそっぽを向いてしまった。
横を向いているが、カトルのエプロンを掴んで離さない小さな子。
一緒に遊ぶのが嫌なわけではなくて、少し感じてしまった寂しいという気持ちを持て余しているのだ。それは小さいながらもアインが男の子であるためだとカトルは知っていた。
「じゃあ、ブロックで遊ぼう! 大きなロボットを作りたいんだけど、難しいんだよー。すぐにグシャッてなっちゃうんだ。アインなら上手く出来るんじゃないかなぁ」
子供ながら自尊心をくすぐられたのか、アインは張りつくような視線でカトルを見る。
「カッコいいロボット、先生に見せてよ!」
この言葉がとどめ。
力強くうなずいたアインに逆にカトルが手を引かれ、ブロックの入った箱の側へと移動した。
時の経つのも忘れ、強そうなロボットをいかにして作ろうかと没頭していたアインが動きを止めた。見れば、期待に満ちた表情を浮かべている。
微かに聞えてきた足音。
カトルの耳にも届く、たぶん、この園内に響く足音の中で一番軽やかなステップ。駆け足の音はあっという間に近づいてくる。
「アインのお父さんだ。ね?」
「むかえにきた」
「うん。お迎えにきてくれたんだ。アインよかったねぇ」
カトルはアインの頭をポンポンとなでる。
次の会話を交わす間もなく「遅くなりましたっ」という声が室内に飛び込んできた。
「こん……にち、は」
日が傾き、夕刻と言って差し障りのない時間だと気づき、言葉を選びかねていたカトルのあいさつは、そんな途切れかたをした。
「こんにちは。……って言うには、ちょっと微妙な感じだね。――ただいま。これなら時間は関係ないか」
「おかえりなさい。ご苦労さまです」
デュオのフォローにカトルは思わず頭を下げ、対になる語を口にする。
「……新婚気分」
こうデュオが呟くのも無理はないか。
立ち上がり、お辞儀をするカトルにつられるように、座り込んでいたアインも立つには立ったが、そのままカトルの脚にしがみついていた。
「どうしたのアイン? おかえりなさい、は?」
「アイン、ごめんな遅くなって。今日は早いなんて言っちまって悪いことしたな」
男手一つで子供を育てているとは到底想像できない身軽そうな風体のデュオだが、アインの様子や遣り取りを見ていれば、いい親父さんであるとわかる。
すねているのかと、デュオも息子にむけて手を合わせるのだが、アインはカトルから離れようとしない。
立ち難いということは配慮にいれてもらえていない体勢だが、保父を始めてから、カトルはこの手のまといつきには免疫ができた。華奢な身体は器用にバランスをとり、手招きする父親のほうへとアインの背中を軽く押すのだが。
「アイン?」
「こら、アイン。先生困らせんな」
「いえ、ぼくは大丈夫です」
エプロンの中にまで入り込む勢いで、身を隠そうとするアインを見ながら、デュオは「コイツは何をやってんだぁ?」と考えをめぐらせる。
「うちの坊主、なんか悪さしませんでした?」
思いついたのはこれくらいのことだったが、
「いいえ、とてもいい子でしたよ。逆に、いい子にしてたから、お父さんにほめてもらおうと思っていたくらいです」
首を横に振られてしまった。
「怒ってんのか?」
尋ねてもアインからの返事はない。
弱った顔をしたデュオを見て、カトルは微かに笑う。それはとても好意的な笑み。
見かねたのか、後ろにアインをくっつけたままカトルが彼に近づいてきた。
アップで見るカトルに、
(わぁ、可愛いわぁ~)
と、デュオが思っていると、知るよしもない本人様は小さな声で耳打ちしてきた。
「……きっと、照れてるんです」
目を丸くしたデュオに至近距離のまま、にっこりと微笑む。
「カワイイねぇ……」
そう呟いたのは、わが子に。そしてカトルに。二人に向けたに決まっている。
デュオの心中を、そんなふうに断言するのは浅はかだろうか。
「アイン、夕飯なにがいい? 一緒に買い物して帰るぞ」
カトルの言葉が当たっているなら照れているせいだろうが、捕まえてもなおジタバタと往生際の悪いところを見せ、腕の中から抜け出そうとするアインをデュオはくすぐる。一度、緊張がとけてしまえばいつもの調子に戻り、アインもはしゃいだ声で笑い出していた。
今日の夕飯のメインはエビフライにしようと話し合いもついたところで、三人でブロックのお片づけをはじめた。
話し声が大きく聞える。
静かに感じるのは夕闇の効果ではなく、室内に音が少し響くだけだ。たくさんの園児がいる普段ならありえない。
二人きりだと思ったら、途端のデュオはドキドキとしはじめた。どうやら、わが子は頭数には含まれていないようだった。
最後のブロックを片ひざをついたデュオが拾い上げ、「はいよ」と手渡すと、アインはそれをせっせと箱へ運んでいく。
すぐ横にいるカトルは床に両ひざをついた姿勢のまま、アインの背中をしっかりと見ていた。
いつもは見下ろすことばかりのカトルと、目線の高さが同じくらいになっていることさえ、デュオは嬉しくなる。
些細なことにまで敏感になっている。
初恋にときめく少年のようだと表現しても、言い過ぎではないであろう。
アインが勝手に決めている園内の拠点であるカトルの元に戻ってきた。それをカトルは受け入れる。お片づけできたことをニコニコとした笑顔で褒めたたえ、立ち上がる何気ない延長のように、そのままカトルはアインを抱っこした。
低い姿勢でいたデュオは、そんなカトルの一連の動作を見上げることになった。
それは、ものすごく新鮮な感覚だった。
子供の目線とはこうなのか。
と、思ったら、頭の中でデュオは、その体勢のまま両腕で強く、カトルの身体を抱きしめていた。
これも、カトルに抱きつきにいく、子供の気持ちと一緒なのだろうか?
アインの手を引いて帰路につこうとしていたはずのデュオが、忘れ物を思い出したように、くるりときびすを返した。
「……先生」
軽く首をかしげ、カトルは大きな碧い瞳で「何でしょう?」とデュオを見る。
「カトル先生」
「はい?」
「オレの名前、知ってます?」
「名前、ですか? 園児の名前ですから、ぼくが知らないわけ、ありませんよね?」
何かの謎かけなのかとカトルは考える。
「あの、先生。オレが言ってんのはマックスウェルじゃないほうね」
「あぁ、そうですか。知ってますよ」
合点して、感触のよさそうな唇が笑みをつくるのを見てデュオも微笑むのであるが、ふんわりとしたカトルのそれとは違い、唇の片端をクイッと引き上げるというものだった。
ついでか、片目を細める。カトルとはパターンがかなり違うが、デュオも表情のレパートリーは豊富すぎるほどだ。
「じゃあ、言ってみてくんない」
「名前をですか?」
「そう」
「デュオーッ!」
大きな声はアイン。
「お前は言わなくていいんだよっ! おやじを呼び捨てにするってのはどういうことだぁ」
横槍もいいところ。と、ガックリ肩を落とすデュオと違い、そうは思ってはいない人もいる。
「じゃあ、ぼくは?」
「カトルせんせー!」
「よくできましたぁ」
なんて、保育はもちろん教育もほどこす。
「アイン、先生は呼び捨てじゃないんだな」
「だって、カトルせんせいは、せんせいだもん」
「オレ、お父さんなんですけど……」
子供相手に道理は通じない。自分の顔の中心を指す姿がもの悲しい。
しかしデュオは、父親にどんな飾りを付けろというのか。そこまで深く考えていないのかも。
「……で、続き」
アインを片手でいなしながらカトルに向き直り、会話をずれる前まで強引の軌道修正する。
「先にアインが言ってしまいましたけど。デュオさんですよね」
「さん……は、いらない。それ、とっぱらって呼んでくんない、カトル先生」
にこやかなデュオの表情は「今から手品を始めます。お手伝いのほうをヨロシク」といった感じで、なぜだか逆らえない。
おだやかに有無を言わせない雰囲気にカトルも観念し、「失礼します」という気持ちで。
「……デュオ、ですか?」
すると、待ってましたとばかりに。
「いつか、自然にそう呼んでくれると嬉しいんだけど」
「そんなの」
言葉はデュオに、目線はアインに。
「無理ってのはなしだぜ。何も急にってわけじゃないし、他の人間の前でまでなんて、オレだって無茶は言わないよ。ちょこっとナイショで、ご褒美みたいにでもいいんだけど」
その表現にカトルは笑ってしまう。
「それじゃあ、全然ありがたくないですよ」
「オレにとっては、ありがたいの。ちなみにオレ、逆でも嬉しいなぁ」
カトルって呼びたい。
節度をもって今は省略。
それなのに、デュオがささやいた響きを想像したのか、カトルが頬を色づかせた。白い肌は血色のいいピンクを帯びる。
赤くなっていると感づかれないようにしたいのか、それ以上、赤くなるまいとしているのか、カトルは息をとめた。
堪えているような表情のカトルを見て、触発されるなというほうが酷だろう。デュオの胸にドキドキが、ムラムラとわいてきた。
「……カトル」
そう無意識でデュオの口をついた。
同時に起こしていた行動も、彼にとっては自然なものだった。
カトルに近づく。
デュオはアインの動きと目の自由を奪うため、自分の身体にその小さな身体を押し付けた。
その間も、視線はずっと一人に固定されている。
輪郭を目でなぞるよう、まばたきを忘れた大きな瞳から焦点をずらす。行きついた先の頬に手をかけ、すべらせた手で感じた柔らかい肌の感触に息を飲む。自身の手との対比で、カトルの線の細さがデュオの視界の中で鮮明になった。
可愛くて綺麗で、なんて、繊細な人。
微かに震えているが逃げ出さないカトルは、驚きに固まってしまったのかも。
「好きだって伝わります?」
今デュオが使えるのは片手だけだが、不自由さを感じさせない身のこなしで、上向かせるためカトルの顎をすくう。
「伝わってたら、呼んでくんない。……カトル」
ささやきがカトルの唇に触れる。
抑えた音は、すべり落ちる間もなく消えていく。
床に落ちた影は、溶け合う。
「……デュ、デュオ……」
か細い声がそこで途絶えたのは、カトルの意思ではなく……。
「デュオさん」とまで言わせないために、口を塞ごうとしたものがあったからだった。
「さようなら」
それを聞くと少し寂しくなる。
だけど、
「また明日ね」
アインに。
そして、
「また、明日……」
デュオに。
続けられたその言葉で、たちまち気持ちは一変する。
嫌な人間には言わないはず。それをわざわざカトルは個々に言ったのだ。デュオからすれば大きな意味を感じて当然だろう。
約束。希望。次の日にも「会いたい」というメッセージ。
カトルがこの言葉に込めたのが、そうならいいと思いながら、
「また、明日!」
弾む声でデュオは言う。
手を振るカトルに、満面の笑みでデュオも応えていた。
息子に目隠しをして、カトルにキスをしようとしたが、両手でブロックされてしまい不発に終わってしまった。
デュオとしては、言葉ごと唇を奪ってしまいたかったのに……。
だけど、そんなことにはへこたれず、デュオはもう、明日の登園を楽しみにしているのだった。
まだ暗くなって数時間も経たないうちに、早く夜が明ければいいと思う。
朝が来ればカトルに会える。
明日が晴れでも曇りでも、たとえ雨が降っていようとも、きっと、デュオはカトルを口説いているに違いない。
天候を確実に言い当てることなんて出来ないが、それだけは的中すること間違いなしだった。
ここまでのお付き合いありがとうございましたv
息子のアインですが、名前は北斗の拳のアインさんからいただきました!!(笑)
彼は女のために、とかいいつつ、愛娘のために闘っていたりする、ナイスガイでしたvv
コスチュームは星条旗だしぃー、っていう意味のわかららない理由で名前つけました。
相方の碧くんに数字のイチにかけたんだね!と言われたのですが、何語でか(ドイツ語でしたっけ?)アインスってイチだったと、つけたときには忘却していました;;
もし、数字のイチだ!と意識していたら、息子がヒイロになっていたことでしょう。。
だったら、まったく、お話の内容変わってましたね。
デュオさんの気苦労が増えるだろうから、イチにちなんだ性格付けをしなくて正解だったのかもしれません(デュオ的にはですがね!)
ちなみにアインは一度遊んだことのある女性がある日とつぜん家に押しかけてきて「あなたの子供よ!」と主張して押し付けてきた子供だろうとおもいます(ザ・貧乏クジ男!)
うっそーーー;;と思いながらも、押し付けてきた女性がそのままジョウハツしてしまい打つ手もなく、相手の思惑どおりに子供にはきっちり愛情を注いで育てているデュオさんでした。。(人がいい。。笑)
そんなわけで、血はつながっていないと思われます。
なので、顔とか似ていません。
こんな設定ダメですかねぇ。。(反応がコワい;;)
続編と言うか、本にはしていない未発表のお話もまだあります、じつは。
個人的には珍しく自分では好きなお話なので、お嫌いじゃないかたがいらっしゃればいいなぁと思います。
拍手やコメントお待ちしております!!
ひと言、「OK!」や「non!!」だけでも結構ですので、お気軽に声をかけてやってくださいね!
「せんせい、さよ~ならぁ」
「さようなら、気をつけてね」
大きな声であいさつをして、園児が母親に手を引かれて帰っていく。
高い山と小さな山、影は一つにつながった。
子供からすれば高い位置にある母の手を、しっかりと握る姿は、なんてけなげなんだろう。見送るカトルの瞳も自然と細められていた。
これで、ここに残る子供はアイン一人になってしまった。
手をつないで一緒にお見送りをしていたアインと、目線が同じになるようカトルは身を屈めた。
「アインのお父さんも、もうすぐお迎えに来てくれるからね。先生とお絵描きをして待ってよう」
しかし、何が気に入らないのか、アインはぷいっとそっぽを向いてしまった。
横を向いているが、カトルのエプロンを掴んで離さない小さな子。
一緒に遊ぶのが嫌なわけではなくて、少し感じてしまった寂しいという気持ちを持て余しているのだ。それは小さいながらもアインが男の子であるためだとカトルは知っていた。
「じゃあ、ブロックで遊ぼう! 大きなロボットを作りたいんだけど、難しいんだよー。すぐにグシャッてなっちゃうんだ。アインなら上手く出来るんじゃないかなぁ」
子供ながら自尊心をくすぐられたのか、アインは張りつくような視線でカトルを見る。
「カッコいいロボット、先生に見せてよ!」
この言葉がとどめ。
力強くうなずいたアインに逆にカトルが手を引かれ、ブロックの入った箱の側へと移動した。
時の経つのも忘れ、強そうなロボットをいかにして作ろうかと没頭していたアインが動きを止めた。見れば、期待に満ちた表情を浮かべている。
微かに聞えてきた足音。
カトルの耳にも届く、たぶん、この園内に響く足音の中で一番軽やかなステップ。駆け足の音はあっという間に近づいてくる。
「アインのお父さんだ。ね?」
「むかえにきた」
「うん。お迎えにきてくれたんだ。アインよかったねぇ」
カトルはアインの頭をポンポンとなでる。
次の会話を交わす間もなく「遅くなりましたっ」という声が室内に飛び込んできた。
「こん……にち、は」
日が傾き、夕刻と言って差し障りのない時間だと気づき、言葉を選びかねていたカトルのあいさつは、そんな途切れかたをした。
「こんにちは。……って言うには、ちょっと微妙な感じだね。――ただいま。これなら時間は関係ないか」
「おかえりなさい。ご苦労さまです」
デュオのフォローにカトルは思わず頭を下げ、対になる語を口にする。
「……新婚気分」
こうデュオが呟くのも無理はないか。
立ち上がり、お辞儀をするカトルにつられるように、座り込んでいたアインも立つには立ったが、そのままカトルの脚にしがみついていた。
「どうしたのアイン? おかえりなさい、は?」
「アイン、ごめんな遅くなって。今日は早いなんて言っちまって悪いことしたな」
男手一つで子供を育てているとは到底想像できない身軽そうな風体のデュオだが、アインの様子や遣り取りを見ていれば、いい親父さんであるとわかる。
すねているのかと、デュオも息子にむけて手を合わせるのだが、アインはカトルから離れようとしない。
立ち難いということは配慮にいれてもらえていない体勢だが、保父を始めてから、カトルはこの手のまといつきには免疫ができた。華奢な身体は器用にバランスをとり、手招きする父親のほうへとアインの背中を軽く押すのだが。
「アイン?」
「こら、アイン。先生困らせんな」
「いえ、ぼくは大丈夫です」
エプロンの中にまで入り込む勢いで、身を隠そうとするアインを見ながら、デュオは「コイツは何をやってんだぁ?」と考えをめぐらせる。
「うちの坊主、なんか悪さしませんでした?」
思いついたのはこれくらいのことだったが、
「いいえ、とてもいい子でしたよ。逆に、いい子にしてたから、お父さんにほめてもらおうと思っていたくらいです」
首を横に振られてしまった。
「怒ってんのか?」
尋ねてもアインからの返事はない。
弱った顔をしたデュオを見て、カトルは微かに笑う。それはとても好意的な笑み。
見かねたのか、後ろにアインをくっつけたままカトルが彼に近づいてきた。
アップで見るカトルに、
(わぁ、可愛いわぁ~)
と、デュオが思っていると、知るよしもない本人様は小さな声で耳打ちしてきた。
「……きっと、照れてるんです」
目を丸くしたデュオに至近距離のまま、にっこりと微笑む。
「カワイイねぇ……」
そう呟いたのは、わが子に。そしてカトルに。二人に向けたに決まっている。
デュオの心中を、そんなふうに断言するのは浅はかだろうか。
「アイン、夕飯なにがいい? 一緒に買い物して帰るぞ」
カトルの言葉が当たっているなら照れているせいだろうが、捕まえてもなおジタバタと往生際の悪いところを見せ、腕の中から抜け出そうとするアインをデュオはくすぐる。一度、緊張がとけてしまえばいつもの調子に戻り、アインもはしゃいだ声で笑い出していた。
今日の夕飯のメインはエビフライにしようと話し合いもついたところで、三人でブロックのお片づけをはじめた。
話し声が大きく聞える。
静かに感じるのは夕闇の効果ではなく、室内に音が少し響くだけだ。たくさんの園児がいる普段ならありえない。
二人きりだと思ったら、途端のデュオはドキドキとしはじめた。どうやら、わが子は頭数には含まれていないようだった。
最後のブロックを片ひざをついたデュオが拾い上げ、「はいよ」と手渡すと、アインはそれをせっせと箱へ運んでいく。
すぐ横にいるカトルは床に両ひざをついた姿勢のまま、アインの背中をしっかりと見ていた。
いつもは見下ろすことばかりのカトルと、目線の高さが同じくらいになっていることさえ、デュオは嬉しくなる。
些細なことにまで敏感になっている。
初恋にときめく少年のようだと表現しても、言い過ぎではないであろう。
アインが勝手に決めている園内の拠点であるカトルの元に戻ってきた。それをカトルは受け入れる。お片づけできたことをニコニコとした笑顔で褒めたたえ、立ち上がる何気ない延長のように、そのままカトルはアインを抱っこした。
低い姿勢でいたデュオは、そんなカトルの一連の動作を見上げることになった。
それは、ものすごく新鮮な感覚だった。
子供の目線とはこうなのか。
と、思ったら、頭の中でデュオは、その体勢のまま両腕で強く、カトルの身体を抱きしめていた。
これも、カトルに抱きつきにいく、子供の気持ちと一緒なのだろうか?
アインの手を引いて帰路につこうとしていたはずのデュオが、忘れ物を思い出したように、くるりときびすを返した。
「……先生」
軽く首をかしげ、カトルは大きな碧い瞳で「何でしょう?」とデュオを見る。
「カトル先生」
「はい?」
「オレの名前、知ってます?」
「名前、ですか? 園児の名前ですから、ぼくが知らないわけ、ありませんよね?」
何かの謎かけなのかとカトルは考える。
「あの、先生。オレが言ってんのはマックスウェルじゃないほうね」
「あぁ、そうですか。知ってますよ」
合点して、感触のよさそうな唇が笑みをつくるのを見てデュオも微笑むのであるが、ふんわりとしたカトルのそれとは違い、唇の片端をクイッと引き上げるというものだった。
ついでか、片目を細める。カトルとはパターンがかなり違うが、デュオも表情のレパートリーは豊富すぎるほどだ。
「じゃあ、言ってみてくんない」
「名前をですか?」
「そう」
「デュオーッ!」
大きな声はアイン。
「お前は言わなくていいんだよっ! おやじを呼び捨てにするってのはどういうことだぁ」
横槍もいいところ。と、ガックリ肩を落とすデュオと違い、そうは思ってはいない人もいる。
「じゃあ、ぼくは?」
「カトルせんせー!」
「よくできましたぁ」
なんて、保育はもちろん教育もほどこす。
「アイン、先生は呼び捨てじゃないんだな」
「だって、カトルせんせいは、せんせいだもん」
「オレ、お父さんなんですけど……」
子供相手に道理は通じない。自分の顔の中心を指す姿がもの悲しい。
しかしデュオは、父親にどんな飾りを付けろというのか。そこまで深く考えていないのかも。
「……で、続き」
アインを片手でいなしながらカトルに向き直り、会話をずれる前まで強引の軌道修正する。
「先にアインが言ってしまいましたけど。デュオさんですよね」
「さん……は、いらない。それ、とっぱらって呼んでくんない、カトル先生」
にこやかなデュオの表情は「今から手品を始めます。お手伝いのほうをヨロシク」といった感じで、なぜだか逆らえない。
おだやかに有無を言わせない雰囲気にカトルも観念し、「失礼します」という気持ちで。
「……デュオ、ですか?」
すると、待ってましたとばかりに。
「いつか、自然にそう呼んでくれると嬉しいんだけど」
「そんなの」
言葉はデュオに、目線はアインに。
「無理ってのはなしだぜ。何も急にってわけじゃないし、他の人間の前でまでなんて、オレだって無茶は言わないよ。ちょこっとナイショで、ご褒美みたいにでもいいんだけど」
その表現にカトルは笑ってしまう。
「それじゃあ、全然ありがたくないですよ」
「オレにとっては、ありがたいの。ちなみにオレ、逆でも嬉しいなぁ」
カトルって呼びたい。
節度をもって今は省略。
それなのに、デュオがささやいた響きを想像したのか、カトルが頬を色づかせた。白い肌は血色のいいピンクを帯びる。
赤くなっていると感づかれないようにしたいのか、それ以上、赤くなるまいとしているのか、カトルは息をとめた。
堪えているような表情のカトルを見て、触発されるなというほうが酷だろう。デュオの胸にドキドキが、ムラムラとわいてきた。
「……カトル」
そう無意識でデュオの口をついた。
同時に起こしていた行動も、彼にとっては自然なものだった。
カトルに近づく。
デュオはアインの動きと目の自由を奪うため、自分の身体にその小さな身体を押し付けた。
その間も、視線はずっと一人に固定されている。
輪郭を目でなぞるよう、まばたきを忘れた大きな瞳から焦点をずらす。行きついた先の頬に手をかけ、すべらせた手で感じた柔らかい肌の感触に息を飲む。自身の手との対比で、カトルの線の細さがデュオの視界の中で鮮明になった。
可愛くて綺麗で、なんて、繊細な人。
微かに震えているが逃げ出さないカトルは、驚きに固まってしまったのかも。
「好きだって伝わります?」
今デュオが使えるのは片手だけだが、不自由さを感じさせない身のこなしで、上向かせるためカトルの顎をすくう。
「伝わってたら、呼んでくんない。……カトル」
ささやきがカトルの唇に触れる。
抑えた音は、すべり落ちる間もなく消えていく。
床に落ちた影は、溶け合う。
「……デュ、デュオ……」
か細い声がそこで途絶えたのは、カトルの意思ではなく……。
「デュオさん」とまで言わせないために、口を塞ごうとしたものがあったからだった。
「さようなら」
それを聞くと少し寂しくなる。
だけど、
「また明日ね」
アインに。
そして、
「また、明日……」
デュオに。
続けられたその言葉で、たちまち気持ちは一変する。
嫌な人間には言わないはず。それをわざわざカトルは個々に言ったのだ。デュオからすれば大きな意味を感じて当然だろう。
約束。希望。次の日にも「会いたい」というメッセージ。
カトルがこの言葉に込めたのが、そうならいいと思いながら、
「また、明日!」
弾む声でデュオは言う。
手を振るカトルに、満面の笑みでデュオも応えていた。
息子に目隠しをして、カトルにキスをしようとしたが、両手でブロックされてしまい不発に終わってしまった。
デュオとしては、言葉ごと唇を奪ってしまいたかったのに……。
だけど、そんなことにはへこたれず、デュオはもう、明日の登園を楽しみにしているのだった。
まだ暗くなって数時間も経たないうちに、早く夜が明ければいいと思う。
朝が来ればカトルに会える。
明日が晴れでも曇りでも、たとえ雨が降っていようとも、きっと、デュオはカトルを口説いているに違いない。
天候を確実に言い当てることなんて出来ないが、それだけは的中すること間違いなしだった。
*FIN*
「マシュマロとこんぺいとーをあつめて」
2001年6月24日 初出
に、少し加筆訂正しました。
2001年6月24日 初出
に、少し加筆訂正しました。
ここまでのお付き合いありがとうございましたv
息子のアインですが、名前は北斗の拳のアインさんからいただきました!!(笑)
彼は女のために、とかいいつつ、愛娘のために闘っていたりする、ナイスガイでしたvv
コスチュームは星条旗だしぃー、っていう意味のわかららない理由で名前つけました。
相方の碧くんに数字のイチにかけたんだね!と言われたのですが、何語でか(ドイツ語でしたっけ?)アインスってイチだったと、つけたときには忘却していました;;
もし、数字のイチだ!と意識していたら、息子がヒイロになっていたことでしょう。。
だったら、まったく、お話の内容変わってましたね。
デュオさんの気苦労が増えるだろうから、イチにちなんだ性格付けをしなくて正解だったのかもしれません(デュオ的にはですがね!)
ちなみにアインは一度遊んだことのある女性がある日とつぜん家に押しかけてきて「あなたの子供よ!」と主張して押し付けてきた子供だろうとおもいます(ザ・貧乏クジ男!)
うっそーーー;;と思いながらも、押し付けてきた女性がそのままジョウハツしてしまい打つ手もなく、相手の思惑どおりに子供にはきっちり愛情を注いで育てているデュオさんでした。。(人がいい。。笑)
そんなわけで、血はつながっていないと思われます。
なので、顔とか似ていません。
こんな設定ダメですかねぇ。。(反応がコワい;;)
続編と言うか、本にはしていない未発表のお話もまだあります、じつは。
個人的には珍しく自分では好きなお話なので、お嫌いじゃないかたがいらっしゃればいいなぁと思います。
拍手やコメントお待ちしております!!
ひと言、「OK!」や「non!!」だけでも結構ですので、お気軽に声をかけてやってくださいね!
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プロフィール
HN:
たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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