~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~
『動悸~どうき~』
トロワ×カトル
カトルが電車に初トライするお話です。
付き添はトロワ。
ぎゅうぎゅうと押しこめられた車内でときめきは生まれるのか?
カトルの力を一般兵士を100としたときに110あるという
くだんのデータがホントだったりしてね。
ということで描かれています。
こんなお話でもお嫌いじゃなければ、
拍手やコメントしてやってくださいませv
本当に本当に切望しております!
ではでは、本文を読むから小説スタート!
トロワ×カトル
カトルが電車に初トライするお話です。
付き添はトロワ。
ぎゅうぎゅうと押しこめられた車内でときめきは生まれるのか?
カトルの力を一般兵士を100としたときに110あるという
くだんのデータがホントだったりしてね。
ということで描かれています。
こんなお話でもお嫌いじゃなければ、
拍手やコメントしてやってくださいませv
本当に本当に切望しております!
ではでは、本文を読むから小説スタート!
『動悸~どうき~』
「カトル、本当にこれに乗るのか?」
想像以上の人の数に眼を見開いたカトルにトロワは静かに声を掛けた。
プラットホームに滑り込んできた電車が徐々に減速する。行き過ぎる窓から覗いていたものは、これでもかとぎゅうぎゅうに押し込められた人々。
(目の前に停まる車両が少しでも空いていてくれれば……)
カトルの淡い期待は一瞬で崩れ。他と変わることのない、飽和量を優に超えているようにしか見えない車両が、間抜けに口を開いた。
「……ぅ、うん」
ギシギシと鈍い音を立てそうな、ぎこちない首の動きで頷くと、カトルは横に立つトロワも見ずに進みだした。
「行こう、トロワ」
サンドロックのコクピットに座っているときのような表情(かお)だな。と、妙に凛々しい表情を張りつかせたカトルを見て、トロワは少し可笑しく思った。
人の流れに続きドアの前に立つ。
しかし、何処をどう見ても、カトルにはその空間に入り込む余地を見つけ出すことが出来ない。通勤時間とカチ合ってしまった電車の混雑振りは、並み大抵ではなかった。
だからと言って、ここまで来て乗り込まないのは男らしくないような気がして絶対に嫌だった。
意志が強いと言えば聞こえはいいが、頑固と言ってしまえばそれまでだ。
電車に乗ってみたいと言い出したのはカトルで。時間がマズイと呟いたのはトロワ。
『普段から、ああいう物に乗り慣れていないカトルには過酷すぎる』
トロワが自分をからかうために、過剰な表現を使っていると思っていた。
そもそもトロワは冗談を言うような類の人ではなかったのに。
ホームで電車を待つ間にも、もし気が変わったなら、いつでも車にすればいいと言ってくれていた。
(オーバーに言っていたわけじゃ、なかったんだ……)
まだ、他の車両でも人が乗り込んでいっている。それでも、いつまでもモタモタとしていれば、扉を閉じられてしまう。それなのに、両脚をホームにふん縛ったまま、カトルは握り拳であわあわしていた。
すっと横を通ったトロワはひょいと電車に乗り込むとカトルの手首を引いた。カトルも引かれるままにその後に続く。なんとか足の踏み場を見つけトロワの身体の前に身を寄せた。
カトルはなんだか、自分がドアの外にはみ出しているような、居心地の悪い感覚の中にいた。本当にドアが閉じるのか、トロワにへばりつきながらカトルは不安を覚えた。
静かにドアが閉まる。
カトルは後ろを気にして、ゆっくりと閉じるドアを背中越しにチラチラと見遣る。
ますます窮屈になる車内。完全に閉まったドアに背を凭せ掛からせると、息苦しさにカトルは呼吸を止めた。
電車が動き出すと、これだけ人がぎゅうぎゅうに押し込まれているにもかかわらず、揺れる。
他の乗客に押し潰されてしまわないかとドキドキしながら、カトルはドアに背をつけていた。
あまりにも壮絶な車内の状況に、きょろきょろとカトルは視線を泳がせる。
(みんな平気なのかな?)
どこもかしこも、眉をしかめた人ばかり。二十代と思しき女性は不快そうに、背広姿の中年男性の背中に顔がぴたりと当たるのを耐え忍んでいる。見える範囲だけでも皆よく、上手に肺に空気を取り入れることができるものだと感心してしまう。
そのわりには自分の目の前には少しの空間があって、酸素には不自由していなかった。
目の前に見えるトロワの整った顔は、あまりいつもと変わらない。
きっとデュオでも笑顔じゃないだろうし、ヒイロでもしかめっ面だろう。五飛なら大激怒だろうか。
表情が乏しいだけかもしれないが、トロワはオトナだなぁとカトルは思う。
そんなことを思いながら、ぼんやりとトロワの姿を見つめ、カトルはあることに気がついた。
普通、この状況なら、人の背中の間で喘ぐことになる小柄な人間にとっては、空気も薄いはずなのに、それがまだましだったのは、トロワが調度カトルの顔の横辺りに手を伸ばして扉に片手をついてカトルが身を置くスペースを確保してくれているからだと。
カトルは車内の凄さに圧倒されて、自分のことだけで精一杯だったのに、トロワは他人の自分のことにまで気を遣ってくれいた。比べてしまうと、ありがたい気持ちと、やはり自分はまだまだ彼に及ばないと、カトルはしゅんとしてしまう。
このときのカトルの重大な勘違いは『カトル(自分)』を気にかけての行動を『他人(みんな)』と、くくってしまっているところだった。
トロワがカトル以外の者にそんな配慮をしただろうか。答えは明白だろう。
ガタンと大きく電車が揺れて、思うように脚を広げ踏ん張ることが出来ずにいたカトルがよろめいた。
「ぅわっ!」
トロワの腕に支えられ、体勢を整える。
そのときに、背中でビィンッと突っ張る妙な感覚がした。
(ま、まさか……)
嫌な予感に身動きのとりにくい車内でカトルがのそのそと背中に腕を回すと、ドアにベストの裾が挟まっていた。
「ッ! どぉうしよう……ベストが、挟まれてた、みたい」
とりあえず、目の前に立つトロワに報告してみる。
内容が内容であるだけに、気恥ずかしくて、何故か周りの人にはあまり知られたくなくて、トロワだけに聞こえるように、カトルは彼の服を引っ張り顔を近づけた。
「こっちの扉が、もう、開かないってことはないよね」
じぃっとカトルの貌を見つめたまま、無反応なトロワとは対照的に、カトルは蒼褪めそうな様子だ。
「……否、大丈夫だろう」
日頃から、この電車を利用していないトロワには、次にどちらのドアが開くのか、はっきりしたことは言えず、少し濁した表現を使った。
(だろう? ……だろうって、ナニッ?)
それがかえってカトルの不安を煽り、驚いた表情でトロワのシャツを握った。
「もし、目的の駅についてもこのままだったら、そのときは君だけでも先に行って」
神妙な物言いに、妙に深刻なことになってしまったなと、たいして気にもしていないトロワは、カトルの大袈裟な反応に微笑を浮かべた。
そんな暢気なトロワに気づかず、カトルは一人困り果てていた。
「そうだっ! 思い切って、力一杯、引っ張ってみるよ。そうしたら、抜けるかもしれないっ」
そんなことは思い切らなくてもいいぞ、カトル。
トロワは内心そう思った。
そんなトロワの想いもよそに、名案だと思ったカトルは眼を輝かせ、ごそごそと後ろ手にベストを両手で握ると、力を込めようとした。
「ひゃあっっ!」
カトルは肩を竦め小さな悲鳴を上げた。
それにつられ、乗客がチラリと視線をカトルに向ける。注目を浴びてしまったカトルは、頬を朱色に染めて、少し上にあるトロワの顔を上目遣いで睨みつけた。
「な、なにするの、トロワッ!」
小声で強く抗議する。
ベストに手をかけて引っこ抜こうとした瞬間、もそもそと腰の辺りから腕が一本伸びてきて、カトルの手の動きを止めたのだった。
「邪魔しないでよっ」
「なにも慌てて乱暴なことをしなくても、扉が開くのを待てばいいだろ」
「でも、それじゃあ……」
カトルは不満たっぷりのカオをしている。
知らないのだ。カトルは自分の力を。
実はカトルは儚げな容姿に似ず握力などが強かった。周りにいるGパイロットの四人がさらに馬鹿力揃いだったため揉み消されていたが、カトルも普通の大の大人以上に力が強い。そんな怪力を総動員してベストを引き抜こうものなら、いくら体勢は悪くとも破けてしまうことは目に見えている。
ベストの挟まり具合を確認してから、トロワは言葉で説得しても無駄さと悟り、カトルの力の籠った手の甲をにぎにぎと握り、無言で力を抜くように告げる。
違う意味でも頬が色づいてくる。
カトルはズルズルと手を下へとおろした。
トロワはひとつ息を吐くと、カトルの大きな瞳を見つめた。
「お前を置いて先に降りてしまうようなことは決してしないから安心しろ、カトル」
万が一そんなことをしてしまえば、カトルは慣れない車内で人に揉みくちゃにされてしまうだろう。
ただでさえ身動きが取れない状態だ。いくらカトルが男の子だと言っても、こんな『お人形さん』のように可愛らしい容姿で、いかにも困った表情をして、扉にピタリと張りついていたら、その他のいらぬ危険を招いてしまうかもしれない。否、いいカモだろう。トロワがカトルを置いて行けるわけがない。
トロワの言葉に耳まで赤くなったカトルは少し俯き、頷いた。
揺れる車内でトロワは窓の外の景色も見ずに、目の前にあるものを見つめていた。
アップに堪え得る容姿は、なかなか普段はここまで近づいて、長時間見つめることは出来ない。
今は伏せているためよくわからないが、大きな碧い瞳にはいつも圧倒させられる。無闇に大きくない、きゅっと結ばれた小さな口許は聡明な印象を与え、白金の髪の淡い色彩と白い肌は、その肌理の細かさが輪をかけているのか、カトルのふんわりとした霞がかる心象を作り上げる。
そして、視線に気づいているのか、時折この人は、はにかんでこちらを見つめてくる。
窮屈で居心地の悪さしか感じない車内だが、こんな機会はまずありそうもなく。暫くこちらの扉が開かないほうが有り難いと、トロワは不謹慎なことを思った。
そのことをカトルが知ったとすれば、頬を膨らませただろうか。頬を染めただろうか。
いつか、ゆっくりと尋ねてみるのも悪くない……。
初めて電車に乗ったカトルに一番強く残ったものは、結局はトロワの『やさしさ』だった。
ガタンゴトンと電車は走る。
カーブで車体は大きく揺れて、乗客たちを悩ませる。
目的地へ急ぐ人々の中で、少しでも時間が長くかかることを願う者が、痴漢行為に成功した不埒な屑野郎以外にも、ほんの一人、それとも二人、居たことを。誰が想像できただろうか。
ガタンゴトンと電車は揺れた。
■FIN■
1998年10月発行の「存在」という本から
多少の加筆訂正をいたしました。
「カトル、本当にこれに乗るのか?」
想像以上の人の数に眼を見開いたカトルにトロワは静かに声を掛けた。
プラットホームに滑り込んできた電車が徐々に減速する。行き過ぎる窓から覗いていたものは、これでもかとぎゅうぎゅうに押し込められた人々。
(目の前に停まる車両が少しでも空いていてくれれば……)
カトルの淡い期待は一瞬で崩れ。他と変わることのない、飽和量を優に超えているようにしか見えない車両が、間抜けに口を開いた。
「……ぅ、うん」
ギシギシと鈍い音を立てそうな、ぎこちない首の動きで頷くと、カトルは横に立つトロワも見ずに進みだした。
「行こう、トロワ」
サンドロックのコクピットに座っているときのような表情(かお)だな。と、妙に凛々しい表情を張りつかせたカトルを見て、トロワは少し可笑しく思った。
人の流れに続きドアの前に立つ。
しかし、何処をどう見ても、カトルにはその空間に入り込む余地を見つけ出すことが出来ない。通勤時間とカチ合ってしまった電車の混雑振りは、並み大抵ではなかった。
だからと言って、ここまで来て乗り込まないのは男らしくないような気がして絶対に嫌だった。
意志が強いと言えば聞こえはいいが、頑固と言ってしまえばそれまでだ。
電車に乗ってみたいと言い出したのはカトルで。時間がマズイと呟いたのはトロワ。
『普段から、ああいう物に乗り慣れていないカトルには過酷すぎる』
トロワが自分をからかうために、過剰な表現を使っていると思っていた。
そもそもトロワは冗談を言うような類の人ではなかったのに。
ホームで電車を待つ間にも、もし気が変わったなら、いつでも車にすればいいと言ってくれていた。
(オーバーに言っていたわけじゃ、なかったんだ……)
まだ、他の車両でも人が乗り込んでいっている。それでも、いつまでもモタモタとしていれば、扉を閉じられてしまう。それなのに、両脚をホームにふん縛ったまま、カトルは握り拳であわあわしていた。
すっと横を通ったトロワはひょいと電車に乗り込むとカトルの手首を引いた。カトルも引かれるままにその後に続く。なんとか足の踏み場を見つけトロワの身体の前に身を寄せた。
カトルはなんだか、自分がドアの外にはみ出しているような、居心地の悪い感覚の中にいた。本当にドアが閉じるのか、トロワにへばりつきながらカトルは不安を覚えた。
静かにドアが閉まる。
カトルは後ろを気にして、ゆっくりと閉じるドアを背中越しにチラチラと見遣る。
ますます窮屈になる車内。完全に閉まったドアに背を凭せ掛からせると、息苦しさにカトルは呼吸を止めた。
電車が動き出すと、これだけ人がぎゅうぎゅうに押し込まれているにもかかわらず、揺れる。
他の乗客に押し潰されてしまわないかとドキドキしながら、カトルはドアに背をつけていた。
あまりにも壮絶な車内の状況に、きょろきょろとカトルは視線を泳がせる。
(みんな平気なのかな?)
どこもかしこも、眉をしかめた人ばかり。二十代と思しき女性は不快そうに、背広姿の中年男性の背中に顔がぴたりと当たるのを耐え忍んでいる。見える範囲だけでも皆よく、上手に肺に空気を取り入れることができるものだと感心してしまう。
そのわりには自分の目の前には少しの空間があって、酸素には不自由していなかった。
目の前に見えるトロワの整った顔は、あまりいつもと変わらない。
きっとデュオでも笑顔じゃないだろうし、ヒイロでもしかめっ面だろう。五飛なら大激怒だろうか。
表情が乏しいだけかもしれないが、トロワはオトナだなぁとカトルは思う。
そんなことを思いながら、ぼんやりとトロワの姿を見つめ、カトルはあることに気がついた。
普通、この状況なら、人の背中の間で喘ぐことになる小柄な人間にとっては、空気も薄いはずなのに、それがまだましだったのは、トロワが調度カトルの顔の横辺りに手を伸ばして扉に片手をついてカトルが身を置くスペースを確保してくれているからだと。
カトルは車内の凄さに圧倒されて、自分のことだけで精一杯だったのに、トロワは他人の自分のことにまで気を遣ってくれいた。比べてしまうと、ありがたい気持ちと、やはり自分はまだまだ彼に及ばないと、カトルはしゅんとしてしまう。
このときのカトルの重大な勘違いは『カトル(自分)』を気にかけての行動を『他人(みんな)』と、くくってしまっているところだった。
トロワがカトル以外の者にそんな配慮をしただろうか。答えは明白だろう。
ガタンと大きく電車が揺れて、思うように脚を広げ踏ん張ることが出来ずにいたカトルがよろめいた。
「ぅわっ!」
トロワの腕に支えられ、体勢を整える。
そのときに、背中でビィンッと突っ張る妙な感覚がした。
(ま、まさか……)
嫌な予感に身動きのとりにくい車内でカトルがのそのそと背中に腕を回すと、ドアにベストの裾が挟まっていた。
「ッ! どぉうしよう……ベストが、挟まれてた、みたい」
とりあえず、目の前に立つトロワに報告してみる。
内容が内容であるだけに、気恥ずかしくて、何故か周りの人にはあまり知られたくなくて、トロワだけに聞こえるように、カトルは彼の服を引っ張り顔を近づけた。
「こっちの扉が、もう、開かないってことはないよね」
じぃっとカトルの貌を見つめたまま、無反応なトロワとは対照的に、カトルは蒼褪めそうな様子だ。
「……否、大丈夫だろう」
日頃から、この電車を利用していないトロワには、次にどちらのドアが開くのか、はっきりしたことは言えず、少し濁した表現を使った。
(だろう? ……だろうって、ナニッ?)
それがかえってカトルの不安を煽り、驚いた表情でトロワのシャツを握った。
「もし、目的の駅についてもこのままだったら、そのときは君だけでも先に行って」
神妙な物言いに、妙に深刻なことになってしまったなと、たいして気にもしていないトロワは、カトルの大袈裟な反応に微笑を浮かべた。
そんな暢気なトロワに気づかず、カトルは一人困り果てていた。
「そうだっ! 思い切って、力一杯、引っ張ってみるよ。そうしたら、抜けるかもしれないっ」
そんなことは思い切らなくてもいいぞ、カトル。
トロワは内心そう思った。
そんなトロワの想いもよそに、名案だと思ったカトルは眼を輝かせ、ごそごそと後ろ手にベストを両手で握ると、力を込めようとした。
「ひゃあっっ!」
カトルは肩を竦め小さな悲鳴を上げた。
それにつられ、乗客がチラリと視線をカトルに向ける。注目を浴びてしまったカトルは、頬を朱色に染めて、少し上にあるトロワの顔を上目遣いで睨みつけた。
「な、なにするの、トロワッ!」
小声で強く抗議する。
ベストに手をかけて引っこ抜こうとした瞬間、もそもそと腰の辺りから腕が一本伸びてきて、カトルの手の動きを止めたのだった。
「邪魔しないでよっ」
「なにも慌てて乱暴なことをしなくても、扉が開くのを待てばいいだろ」
「でも、それじゃあ……」
カトルは不満たっぷりのカオをしている。
知らないのだ。カトルは自分の力を。
実はカトルは儚げな容姿に似ず握力などが強かった。周りにいるGパイロットの四人がさらに馬鹿力揃いだったため揉み消されていたが、カトルも普通の大の大人以上に力が強い。そんな怪力を総動員してベストを引き抜こうものなら、いくら体勢は悪くとも破けてしまうことは目に見えている。
ベストの挟まり具合を確認してから、トロワは言葉で説得しても無駄さと悟り、カトルの力の籠った手の甲をにぎにぎと握り、無言で力を抜くように告げる。
違う意味でも頬が色づいてくる。
カトルはズルズルと手を下へとおろした。
トロワはひとつ息を吐くと、カトルの大きな瞳を見つめた。
「お前を置いて先に降りてしまうようなことは決してしないから安心しろ、カトル」
万が一そんなことをしてしまえば、カトルは慣れない車内で人に揉みくちゃにされてしまうだろう。
ただでさえ身動きが取れない状態だ。いくらカトルが男の子だと言っても、こんな『お人形さん』のように可愛らしい容姿で、いかにも困った表情をして、扉にピタリと張りついていたら、その他のいらぬ危険を招いてしまうかもしれない。否、いいカモだろう。トロワがカトルを置いて行けるわけがない。
トロワの言葉に耳まで赤くなったカトルは少し俯き、頷いた。
揺れる車内でトロワは窓の外の景色も見ずに、目の前にあるものを見つめていた。
アップに堪え得る容姿は、なかなか普段はここまで近づいて、長時間見つめることは出来ない。
今は伏せているためよくわからないが、大きな碧い瞳にはいつも圧倒させられる。無闇に大きくない、きゅっと結ばれた小さな口許は聡明な印象を与え、白金の髪の淡い色彩と白い肌は、その肌理の細かさが輪をかけているのか、カトルのふんわりとした霞がかる心象を作り上げる。
そして、視線に気づいているのか、時折この人は、はにかんでこちらを見つめてくる。
窮屈で居心地の悪さしか感じない車内だが、こんな機会はまずありそうもなく。暫くこちらの扉が開かないほうが有り難いと、トロワは不謹慎なことを思った。
そのことをカトルが知ったとすれば、頬を膨らませただろうか。頬を染めただろうか。
いつか、ゆっくりと尋ねてみるのも悪くない……。
初めて電車に乗ったカトルに一番強く残ったものは、結局はトロワの『やさしさ』だった。
ガタンゴトンと電車は走る。
カーブで車体は大きく揺れて、乗客たちを悩ませる。
目的地へ急ぐ人々の中で、少しでも時間が長くかかることを願う者が、痴漢行為に成功した不埒な屑野郎以外にも、ほんの一人、それとも二人、居たことを。誰が想像できただろうか。
ガタンゴトンと電車は揺れた。
■FIN■
1998年10月発行の「存在」という本から
多少の加筆訂正をいたしました。
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プロフィール
HN:
たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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