~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~
元気の秘訣教えます
【講師】トロワ・バートン
日々精力的に生きることができるのかなぜか!
それは、カトルとの愛があるからだ!!
そんなことを「トロワ」らしい語りで
彼なりの角度から考察しています。
トロワ先生の元気の秘訣が、
みなさんに伝われば、拍手喝采。
ではでは、「元気の秘訣」と書いて
「カトルとの愛の日々」と読む
そんなトロワ先生のお話に耳を傾けてくださるかは
「本文を読む」からどうぞご拝聴くださいv
【講師】トロワ・バートン
日々精力的に生きることができるのかなぜか!
それは、カトルとの愛があるからだ!!
そんなことを「トロワ」らしい語りで
彼なりの角度から考察しています。
トロワ先生の元気の秘訣が、
みなさんに伝われば、拍手喝采。
ではでは、「元気の秘訣」と書いて
「カトルとの愛の日々」と読む
そんなトロワ先生のお話に耳を傾けてくださるかは
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元気の秘訣教えます
【講師】トロワ・バートン
【講師】トロワ・バートン
たんに休みが合わないのではなく、カトルの休暇が少なすぎることが大きな問題だった。それは、はじめからわかっていたことだが、実際に一緒に生活していると痛感することになった。
自分は休みの朝にも、
「君の仕事は変則的だし、体力だって使うんだから、今日くらいはゆっくりしてね」
そう言って柔らかく微笑んだカトルは仕事へと赴く。スーツを身に着けたカトルは聡明で凛々しく、典雅な物腰は麗しくこの目に映るが、その華奢な躰でよく激務に耐えているといつも関心していた。
自分の首を絞めていることはわかっていると微苦笑した上で、本人も「現場視察が好きだ」と言うように、許す限りの時間を使い、精力的に各所にカトルは出向いていく。自分の自己満足だとカトルは言うが、それも確実に現場の士気が上がるという効果が出ているのだから無駄ではないわけだ。
視察の模様を直接目にした事はないが、カトルを囲むマグアナックの面々の様子を見ていれば、その情景はありありと想像できる。現れただけで、活力に繋がる英気を人々に与える力を持つというのなら、そのカリスマは絶大だと言えるだろう。
戦場で「そいつの通ったあとは草木一本残らない」という評価を受けている奴がいるが(結構なことだな)、カトルの足跡には植物が顔を出しそうだ。あいつには緑や花がよく似合う。
上品で毛並みのいいカトルだが、豪奢な花でなくとも、――そう道野辺に咲いている花とさえ――やんわりと調和することが出来る資質を備えていた。
カトルは希望を植えつけることができるんだろうか……。
「あと一週間ばんばろーッ!」
シュプレヒコールを上げる群集の図を模すように拳を振り上げたカトル。実に威勢がいい。
伸びをしながら上体をひねる。それはそのまま柔軟体操でも始めそうな風情だった。
――間違いなくお誘いが来る。
続く彼の行動は読めているから、最終章を残すのみとなった本を閉じた。
意気込んで、今からカトルが挑むのは……。
「さぁ、眠ろうかトロワ!」
これだ。
カトルはベッドが好きなのかと思わせるほど眠ることについて意欲的だ。寝るのが好きだというより、そんな感じがするのは、ほとんどうたた寝をしないから。因果関係は証明されないが、そのぶんなのかベッドの入るとなると、はしゃいでいるとしか思えない振る舞いをするためであった。
巣作りに余念がないと思ったのは失礼だが、落ち着く体勢を模索すべくとる一連の動作は、本人がどう否定しようと「可愛すぎる」ものだった。
公の場にいるカトルは美しい人であるのに、奥を探ればそれだけではおさまらない。二人でベッドに入っても、眠る位置を確保するためにゴソゴソと忙しなく動き、シーツに頬を押し付けて、今更ながら抱き締めているこの腕を確認したりする。
微笑を誘う。「おもしろい」と思われていると察していないカトルは、比較的、識別容易なほど上がっていた口許に気付かないままだった。
こちらがカトルの挙動全てに興味を覚えているとは露知らず、満足したようにこの腕の中に納まるようちょこんと身を置くと、日常で感じていることや、その日の出来事を語って聞かせてくれながら、遠慮がちに胸元に手を添えてくる。
丁度、触れた胸ポケットに指を掛けるが手品のタネは入っていないし、そうやってボタンを弄っても何も飛び出しては来ないぞ。
カトルの動きに意味はないとわかっていても内心で茶々を入れてしまうのは、カトルを構いたいだけなのか――無意識で、カトルは人をそういう気にさせる――と、思ったが、なんのことはない、……浮かれているんだな、どうも、これは。
そんなめでたい男にカトルは綺麗な瞳を向けて微笑む。地球の色をつけた――これは武器だ。見るものを、おとす。
喉――脈打つ感覚をリアルの感じたから動脈か――鼓動がそこから聞える。この手の中の存在は、躰に馴染むように柔らかく、あたたかい。指先が痺れるほど愛おしい。
躰の中から感覚を伴って湧き上がるチリチリと熱く感じるこれは、表情の豊かなものなら相好を崩す効果を持つ感情に他ならない。それは、誰もが恋人に感じる、親が子に感じる、婦女子がぬいぐるみに感じる“もの”なのか。
どれも根本にある感情が同じような形をしている可能性はゼロではないのでは? それらの沸き起こる衝動の共通点は、「抱き締めたい」という想い。
恋人のソレならいいが、その他の譬えは一見、子供扱いしているだけだと誤解されかねない危険な比喩。カトルをそんなふうに考えたことは一度もないと言い切れるのに。すみ分け出来ない感情を肯定するのは言い訳だろうか。
――と、こんな話をしていれば、結構なことじゃないかと思われそうだが、過ぎた日の思い出と嘆きはしないが、今の言葉が示すように、いささか状況が変わってきていた。
日を追うごとに目に見えてカトルの眠るときの態度が変化し、気のせいだとは誤魔化せないくらい、はっきり背中を向けるようになっていた。
徐々にベッドのへりへと移動していると確信し、(あまりに理解不能な奇行を前に、「真意がわからないのに、不用意に触れていいものか」と、悠長にも思案していたが)そっとしておくわけにもいかないと思っていた矢先、“決死の覚悟”というような面持ちで、カトルから出された提案で寝室をわかつことになったのは数日前から。
今更思い返しても何が変わるわけでもないが、こういうときに限って即断しなかったことに少なからず後悔している。
別に眠ると言い出した理由で考えられる要因は何か? 推察してみたが、「疲れていながら無理をして自分に付き合っていると思い込んだカトルが、過剰にこちらの体を気遣い大胆な戦法をとった」と、このくらいの見方しか出来ない。
カトルは基本的に「人」を優先するタイプだ。だから、「どうせ俺は明日、休みだから構わないんだが」と、まず気を遣わなくてもいい状況だと説明し、声を掛けたが、
「僕のことはいいから。トロワもちゃんと休まなきゃ駄目じゃないか!」
この反応。可笑しなもので、こちらが叱られているような気分になる。「体が大きなぶん、子供よりも始末が悪いんだよ君って」とさえ言われたこともあったが、再現するように、カトルの口調はその時と同じものであった。
カトルも同じようなものなのに、と頭の中の映像相手に意見していたら、駄目押しか、
「まったく君って人は、赤ん坊でも泣いて意思表示しようとするんだよ」
とは手厳しい。子供よりも後退しているじゃないか。
極限状態にある戦場の中に身を置いていたせいだろうか、不満を持ったり根を上げるのは、病に伏せない限り気力の問題だと思い生きてきた。だから今でも耐え難い程の任務はない。上を見ても限がないが、逆もまた然り。要は何と比べるか。自分より過酷な状況・状態で生きるものもいると考えれば、くだらないことで不平不満を述べることが馬鹿馬鹿しくなるだろう。ただ“生きる”ではなく“笑顔さえ忘れず”と思ったのは、間違いなく彼の人の影響だろう。そんな発想は持ち合わせていなかったから。
――思い返せば、息をしているだけだった自分がいる。
誰に頼るわけでもなく独りでいたが、安らぎを感じて、初めて、強張っていたことを意識した。カトルはいつでも見つめてくれていて、揺らぎなく立つ支えになってくれていた。自分の価値や存在を認められるだけで、心は救われると、教えてくれたのはカトルだ。
機微を考えることを放棄していた、虚無的で機械のような人間が、そんなありふれた感情を手に入れるとは。
一人の自分が言う。『脆弱になったのかもしれない』と。……恐れている。――――しかし、手に入れたものの尊さは、全てを凌いでいるだろう?
夜になればストレスと過労のためか、眠そうに瞼を半分閉じているような状況。それなのにカトルは人を労わる優しさを失わずに持っている。それと比べれば、気分で左右され、おのれの保身しか考えていないような奴が時折見せるものは一体なんなんだろうな……。狡猾な人間であるとは思いこそすれ、心底そいつが綺麗だとは思えない。要領がいいだけの者が見せる人目を意識した気遣いを、「優しい」ましてや「頭のいい」人間などと言っている現場に出くわすと、言う者、言われている者、双方に呆れてものも言えなくなる。(最も、それでなくとも黙っているがな)上辺だけのメッキはすぐに剥がれてしまうはず。しかし、それに騙され続ける者もいるわけだ。知らぬなら全てが表面上は満たされているのだろうから、それはそれでよしか。表裏の差が激しい奴は、くれぐれもボロが出ないよう、我が身のためだけに他者を踏みつけ、欺き続けていろ。敢行できれば、それはそれで大したものだ。
心身が健やかなとき、気力が充実しているとき、つまり全てにゆとりがあるときなら、他人を思い遣り励ますことも容易なこと。自分が本当に辛いときに微笑んで、変わらず人を思うことが出来るかどうかが重要。真価が問われるのはそこだろう。これができる人間は極稀で、カトルは本当に優しいと言われるだけの人間だった。
それは必ずしも、完璧にとはいかないかもしれない。しかし、結果だけではない。人はそのプロセスに惹かれる。だから、優しくあろうとする心を持ち続ける、ひたむきなカトルに惹かれるのではないだろうか。
「君って寡黙だし疲れた顔もしないから、周りも忘れてるだろうけど、普通の仕事量じゃないんだろ。しっかり眠って、疲れをとらなきゃいけないんだからね。……トロワぁ、君も僕がいなくても本ばっかり読んでないで、ちゃんと休むんだよ」
口を引き結んでいる表情は“恐い顔”のイメージなのだろう。おまけに腰に手を当てているとくれば、まず間違いない。幾度となくこういう態度をとるカトルを見た。本人の狙っている効果ではないだろうがカトルは愛嬌の塊のようだった。恐くなくても逆らえない。だからか……結果だけは、カトルの望むものにはなるわけだ。
心から案じてくれる最愛の人がいれば疲れも吹き飛んでしまうというもの。心音を聴くように身を寄せてくるカトルを抱き締めるようにして眠るのは心地好いものであるし、髪を撫でられると気持ちがよくて眠りやすいと本人も言っていたのに。辞退の意思は固そうだ。
これはもしや……。
同じベッドで眠っていると仕事で疲れているカトルに構わず、体力が人並み外れている自制のない不埒者が、悪行を働く可能性があると危険視されたのではないかという考えに至り、「それは誤解だカトル」と伝えたが、カトルはキョトンとしたまま大きく首を傾げた。
「トロワがそんなことするわけないじゃない……」
まるで見当違いの発言を受けた顔だった。
「君はいつでも僕の都合を考えてくれてるだろ。自分本位で僕の翌日の仕事に支障が出るようなことをするなんて、君の嫌うことだと思ってるんだけど。優しい人だってわかってるんだから。僕はそんなこと心配してないよ。おかしなことを言うなぁ、トロワってば」
想像以上に理解してくれているカトルに感動させられた。(ただ、状況が逆の場合、すなわちカトルが次の日にゆっくり過ごせるのならば“抱く”と追記)では、何が原因なのかと問いただしてみたところ、
「僕にだって。……僕にも、いろいろあるんだよ」
なんとも歯切れの悪い返事だな。これでは何がいろいろとあるのか、さっぱりわからない。
「大丈夫、ガマンできるから」
――我慢。こう言われるとカトルが拒絶したくてしているんじゃなく、本当は一緒に眠りたいと思ってくれているとわかって安堵するが、そんなカトルだから、少しでも安らかな眠りが得られるようにしてやりたいと思う。こんな男の心中は、自分に向かう特別な好意にだけ鈍いカトルには通じないんだろうな。
了解したと首肯して、せめて甘い菓子を連想させる、その柔らかな頬にひとつ口付けるため、カトルの顎をすくうように手を掛ける。閨を別にするんだ。これくらいはせめてもの……。
上向かせると薄く開く唇が目に留まった。しっとりとした食感……もとい、触感がよみがえる。だが、いつも現実は記憶より鮮烈で甘やか。やはりその感覚を確かめようと、あっさりと最終到達ポイントを横にスライドさせていた。たとえ罠が張られていようと、自らはまりに行く覚悟。この危険だけは回避する術を持たない。
……しかし、唇がたどり着いたのは思わぬところ。白い手のひらが小さな口許を二重にブロックしていたのだ。当然のように当初の目的の場所ではなく、妨害するカトルの手のひらにキスする形になっていた。顎を押し退けるより穏やかな阻止の方法。
「トロワ。眠る前のキスもオアズケだよ」
カトルにとっての“おあずけ”を意味しているのだとわかるが、それはこちらにとっても同じ意味を持つ。むしろカトルが思う以上に、この身は“カトル”に対して貪欲になっているから、わずかな接触でも抑制されるのは「きついな」と零してしまうほど、ため息の出る行為。正直、相当に堪えるんだが。
こういう言葉に限ってカトルには聞えていないことが多い。……ああ、やはり今回も、例に漏れずのようだった。
何もしなくても十二分に大きな瞳を見開いて意思を伝えようとするカトルは、自分が年齢に不釣合いな庇護愛をそそるような者であると自覚が薄い。だから不用意に人を蕩けさせる仕種をする。
強情で可愛げなく振舞うところも可愛く見えるというのは、やはりカトルは(可愛くないふうを装っているつもりらしいが)何をしても無駄ということだろうな。ここはやはり、特殊な嗜好を刺激される輩もいるから、外では止めろと注意しておくべきだろうか。……胸奥で、「止めてくれ……」と、嘆息する自分の姿が今見えた気がした。
なよやかな容姿の頑固者は、ゲストルームへと向かう。
大きな枕を抱えて寝室から出て行こうとしていたカトルは、何か自分の中で納得するように頷くと、こちらを振り返って微笑んだ。
「次の僕の休みも、もうすぐだもんね」
「ああ」
同意を促す口調につられ首が上下していた。そう、その日になれば、丸二日、カトルと二人で過ごすことが出来る。お互いに出来る限り同じ日に休暇をとる努力をしている成果。
ドアノブに手まで掛けていたのに、ふいに方向転換し足音を立てて戻ってくる。結ばれた口許はカトルが何か考えているときの、独特のそれ。
「忘れ物か?」
訊ねながら、微かに残る水気の重みで、うっとおしく下がる前髪をゆっくりと払う。余程飢えているのか、好物の幻覚が見えた。……と思ったら、錯覚ではなかった。手を降ろしていく最中、カトルの唇が頬に触れた。
「おやすみ」
吐息が頬をくすぐる。はにかんだ顔が想像できる小声で言って、こちらが何も反応を返せない素早さで身を離すと、ドアまで逃げていく。急いでいるつもりらしい気持ちを伝える意味しかない、歩く速度と変わらない小走り。
「おやすみなさい、トロワ」
もう一度言うと退散していった。こちらの返事も待たずに逃げるようなそそくさとした態度も愛らしく感じる。
カトルからのキスは希少。大別すると主に二種。他はまずない。
微か過ぎる、体温と柔らかな感触のキス。それと、ぶつかってきているとしか思えない、体当たりのようなキス。今は後者、勢いだけで突っ込んできた。
キスというのは口付けというくらいで、口をぶつけてくるほどの思い切りは必要ではないと漠然と考えるが、頭の中には『カトルに関する特別事項』として既に書き記してあったため、カトルのすることだから……と、すぐに納得。
ちなみの、距離を置いたあとのカトルの行動も興味深い。今のようにはみかむことが多いが、同じくらいの確率でカトルがとる行動は、辛抱たまらないとばかりにする、あれ。――それは実に個性的な取り繕い方だが、カトルは照れ隠しに雄々しくはっきりした音で笑っていたりするのだった。やはりそれでも愛らしくも感じさせるから手に負えない。微笑ましい限り……と、くくらせてもらおう。
さて、カトルの我慢大会はいつまで続けられるのか。強制参加させられる身としては、主催が責任を持って景品も兼ねていることを願う。他のものでは意欲も激減。価値がないもののために参加する熱意はない。「カトルじゃなければ納得しない」というのはいささか贅沢が過ぎるか。どちらにせよ、最高の意思決定機関の決めたこと。抗いようもなく巻き込まれる運命にあると見たほうがよさそうだ。
いつも二人で眠るベッドにカトルがいなくては殺風景を通り越して異質に感じられる。ベッドに腰掛けたまま考える。明日の休日は独り。どう過ごしたものか。
(まったく、くだらないな……)
衝突の余韻の残る頬を軽くこすり、残るはずもない体温を手にしようとした。……が、温もりどころか、歯形もなし、か。
昨日まで日数で表していたのに、カトルの雄叫びもついに、何日という表現から「明日一日」というものになった。着実に日程は消化されていくもの。発想がどうもカトルの感化されているかもしれないが、この些細な違いで、休暇がぐっと身近に迫ったような気がした。
いつもならばこのままベッドに直行のはずが先走り気合を入れるのが早すぎたのか、またソファに腰掛けると、カトルはテレビを見つめたまま人形のようにじっと動かなくなった。瞬きの回数が多いことから、眼を開けたまま眠っているわけではないことだけはわかるのだが。それは、意識がはっきりしているという保証ではない。
まただ。何度ため息を零した? カトルの大きなため息はいつしか呻りになっていた。
肩をしきりに回して揉んでいるが、大きくはない手はぎこちない動きで、満足できているのか甚だあやしいものだった。
自分で首筋を指圧している華奢な手首を見ながら、こちらもぐるりと首を回していた。そうか、凝っていないわけではないんだな。と、今になって自分の身体の状態を把握する。
先日もヒイロ仕込と自称してカトルがマッサージをしてくれたが、(必要に応じて足まで使って圧力を掛けてくる見た目の乱暴さと)あやしげな手際からは想像も出来ないほど気持ちのいいものだった。マッサージというものはある程度はポイントのとらえ方で、力尽くで屈伏させるものではないと想像していたのだが、「ヒイロにはかなわないからーッ」とは、カトルの弁。礼を言ったところカトルのほうが喜んで、事あるごとに「疲れているだろ」と、顔にも出ていないだろうし自覚もないのだが、それをしてくれる。気功を教わろうとカトルは考えているらしく、師匠候補も既に決定済みで「五飛にお願いしたらいいと言ってくれるかな。どう思うトロワ?」と意見を求められた。パワーアップを計画して、何と取っ組み合うつもりか。正直に「今のままでいい。お前は充分に俺を満たしてくれている」とでも告げるべきだろうか。
「カトル」
名前を呼ぶと素直な返事をして見つめてくるカトルの隣へ移動する。綺麗な瞳がよく見えるように、見上げてくるカトルの前髪をかき上げると、手を避けているのか眼を閉じた。すると白い瞼の縁を飾る、ふっさりとした長い睫毛が強調されることになった。この長さで上向いていればマッチを乗せるなど容易いだろうが、カトルにはそれは出来ないはず。それは、そのまま滑り落ちていく角度になっているからだ。元々、伏せ気味の睫毛は目尻の印象を優しくしている。こんなところまで好きだと思っているのは可笑しいのだろうか。
そこを愛らしいと思ったのは、カトルを意識するようにになって直ぐ。そして、綺麗だと思ったのは、触れたときから。
求めているときにカトルが見せる、その震え。すぐに瞳を隠そうとする可憐さ。雫が絡み。泪で濡れた睫毛が上下する動きも好きだ。カトルのよさを知らぬ者に、カトルを恋慕する者に、見せ付けてやりたいと思う気持ちは皆無ではないが、その魅力は誰にも知られたくない。誰も知らなくていい。――言葉を飾るつもりはない、これはカトルへの独占欲。
「トロワ?」
名前を呼んでおきながら、無言のままプラチナゴールドの光に眼を奪われたように髪の毛を弄んでいたのでは、カトルも首を傾げて当然。決して、目的を忘却していたわけではなかったんだが。先程からずっとカトルに言おうと思っていたんだ。
「するか?」
「エエッ――――!?」
随分と尖った音を出したものだなカトル……。
「ちょっと待って、唐突すぎない!? 君、な、なに言ってるのォ?」
可笑しな具合で裏返るカトルの声。
「持て余しているようだから、俺がやってやろうかと言っているんだが。そのほうがカトルも楽だろ。横になれ」
「なにが“横になれ”だよ!」
なぜか怒鳴られた。
「持て余してるってどういう意味!」
口調がきつい上に突っかかってくるカトルは耳まで真っ赤にしている。慎み深い性格だが、これは凶暴なほどの遠慮の仕方だな。
「君って人は……君って、人はぁ……」
そう言ったきり言葉が続かない。
何か今の遣り取りでカトルの機嫌を損ねる発言をしただろうか。説明不足か。――ならば、補おう。
「自分でするよりはいいだろ」
「ャ、やってないもんッ!!」
……どうして泣く。
――――沈黙。
泪は零していないが、そう思った。小さな口をきつく結んで睨みつけてくるカトルの今の表情は、怒りや悲しみに羞恥や驚愕まで読み取れ、複雑すぎて一言で言い表せない。……そんな顔はするな。胸が迫るから。悲しいくらいに表情や態度には焦りが現われていないようだが、崖っぷちに追いやられたような絶望的な気分だ。
「カトル、なにが気に食わないんだ」
「トロワは……ひどいことを言う」
どれが酷いのか、さっぱりわからない。以上。……と、纏めるのは悪い癖だな。考えろ。…………考えるが、やはり、わからない。
「どれがいけなかった?」
聞くしかないだろ。
「……どれって。……どれも……これも。トロワは…………。ぼ、僕……」
喉に詰まって声が出てこないのか、カトルの言葉は文章にならない。理由は不明のままだが、とりあえず全てアウトだったということはわかった。
二人並んでソファに座っている。こんな至近距離で俯かれているというこの状況。黙然とつむじを見つめている。視線をずらした先の、握っているカトルの拳の震えを見ると不憫になる。
危害を加えたつもりはないが、いじめられたような顔をしている被害者がいるとは。いつの間にやら加害者に祭り上げられている。釈然としないがその反面、心の中では確かにカトルに謝罪している自分がいた。弱いのだろう、この人に。
「…………別に、寝てるけど……それでも……だからって…………一人でなんて、してないのに」
弁明? カトルはそういう雰囲気でぽつりぽつりと話す。驚きがそう見せていたのか、重い口を開いたカトルから怒りは消えていた。ただ、所在なさげな様子。こういう時に嫌に可愛く感じるのはカトルの普段からの滑らかに回っているとは言い難い呂律のせいだろうか。カトルの声でそういう話し方をされると太刀打ちできない。
掻き毟るような粗暴な真似はしないが、自分の髪を整える仕種で少し気持ちのほうを整理する。
再び誤解を招かない保証はないが、カトルが穏やかになりつつある今なら。
「肩が凝っているんだろ? 隠す必要はないんじゃないか。自分でするよりも俺がマッサージしてやるほうがいいと思ったんだが。そんなことまで遠慮していてどうする。……それとも、何かまずいことでもあるのか?」
これがカトルを不安にさせることもあるとわかっているのに、幸か不幸か我ながら表情が乏しい。「君に触られたくないんだよ!」とだけは、カトルの口から聞きたくない。と、心の中では耳を塞ぐ。それをおくびにも出さずに、答えを促すため、軽く眼を細めカトルを見た。
すると、(今の内容にどんな打撃を受けたのか)一瞬、硬直して眼を限界まで大きく開いたまま遠くへ行ってしまったカトルの意識が戻り、焦点が合い視線が交わった瞬間、物凄い勢いでカトルがゆだった。
湯気がたっていないのが不思議なほど熱そうな身体。自分の手が焼ける心配もせずに、カトルの両腕を掴み、顔を覗き込む。
「……カトル?」
「…………マァ、マァッサージ……」
「何だカトル?」
「トロワ、……マッサージ?」
「ああ。……カトル?」
「ぐガッ!!」
二の腕に添えていた手をはね飛ばし、カトルは身を捩じるとソファに突っ伏した。――カトルは元気だな。
ソファの脇に置いていたクッションに顔を押し付けているカトルは呻り声を上げている。たった今、弾かれた手を伸ばして、この無防備な背中の主を捕獲してもいいものだろうか。イキはいいが、その気になれば、なんなく制することはできる。
カトルの心臓は悲鳴を上げやすいデリケートな構造。だから、後ろからそっと抱き締める。気をつけなければ、華奢な躰を押し潰し兼ねない体勢だから、気をつけて。覆い被さるように、柔らかく。
ビクンと躰が震えた。あらゆる意味で新鮮な反応。幸運にも反撃はなし。おとなしくしているが、それどころではない事態だったのか。
表情が豊かでリアクションが多彩なカトルの観察日記なら記していても退屈しないだろう。それと引き換え、連日同じ内容を転写して記録を捏造したほうが利口だと思えるほど変化に乏しい奴というのは面白みがない。忍耐力を培う役には立ちそうだが。今更ながら、二人を比べると本当に両極だと思った。――静止画のように動きまで少ない人間の相手はどういう気分だろうな、カトル。
「――――――」
「んん?」
聞えない。音がこもっていて、カトルの言葉を聞き取ることができない。
泣いてはいないだろうかと思うのは、過度の心配性と分類されても仕方がないと、他人事のように流してしまおう。
しかしそれは杞憂に終わる。呻ることに飽きたのか、カトルは肩を震わせ笑っていた。
「間違えた」「恥ずかしい」「僕のバカ」
そのくらいの語が順序やニュアンス、組み合わせを変え、繰り返し唱えられているとしばらくしてからわかった。
「トロワ、ごめんなさい」
カトルの動きを介添えし、その身体を抱き起こす。まだ頬が桃の花より鮮やかに染まっている。色付く肌は甘みを増すようだ。それは感覚ではなく実際の味覚のほうの話。
「君が言ってることを、間違えて受け取っていたんだ」
「俺の? ――――ああ、なるほどな……」
反芻すればすぐにわかった。恥ずかしくて仕方がないというカトルの態度からいっても。……確かに、これは。
この読みも、外しているかもしれないと自信薄なのは、相手がカトルだからだ。
「違うことを、“しよう”って……君が誘っているのかと、思って。……それで、随分なことを言うって、驚いて……」
貴重な出来事になりそうな予感がしてきた。はっきりと事情を把握していないことがカトルに伝わったのか、言葉を濁してはいるが、ここまで誤魔化さずに説明してくるのは意外すぎやしないか。これに調子付き、はっきり言えと強要すれば、予想が的中していた場合は、拳が飛んでくる確率が増す不条理さ。姉に囲まれていたことと、カトルの容姿に惑わされている輩も多いだろうが、カトルの基本は平手にあらず拳だ。そもそも手をあげるような野蛮なことはしないソフトなカトルなのだが、特別待遇にある者がいる。「だって君たち強いんだもの」――それはまるで子供の道理だな。元Gパイロットの面々には手加減は不要というわけか。……しかし、握り締めている手をそのまま振り上げてしまっているだけだと考えれば、可愛いものじゃないか。
カトルの口から言わせるのは可哀想だ。続きは引き受けようと、すぐさま思うのは甘いのか。
乏しい語彙を探り、どちらにしようかと迷ったが決めた。
さて、拳でも受けるとするか。
「つまりあれか。“抱いてやる”と、俺が言っていると思ったんだな」
ヒットするかと思われた、左の頬に衝撃は襲ってこなかった。カトルはおとなしく(いや、動作としては物凄い勢いで)頭を縦に振った。
選択は正しかったと思っておこう。ちなみに落選した表現は「処理してやる」だった。
「……びっくりした」
こちらもだ。
カトルに限って、そういう方向に発想が行くとは思わなかった。
対面するようにこちらを向き、ソファから脚を下ろさずに座り込んでいるカトルは、そわそわと下向き加減で自分の膝の上に乗せた指先の動きを眼で追っていた。見合いのようだが、こんな膝のあたる距離に座りはしないか。
チラチラと瞳を見つめてくるが、そこにじっと留まることのできないカトルの目線。その目許をしげしげと見つめていると、ほどなくして控えめな唇が動いた。
「ごめんなさい。ひどいのは僕だね」
「気にしていない。俺の言い回しに問題があるんだ。カトルが詫びる必要はないだろ」
恥じ入るカトルを浮上させるため、自分の欠点を指摘する。我ながらボキャブラリーが貧困なのにも程がある。言葉を省略しすぎてカトルに恥ずかしい思いをさせてしまったのはミスだ。可哀想に。「持て余している」も潔癖なカトルには辛かっただろうし、「自分で……」に至っては、屈辱的だったろう。デリカシーのないこんな人間を相手にしてさえ、カトルは初心な恥じらいを忘れない。別に大した勘違いではないと考えるが、相手はカトル。――カトルはこの手のことに奥手なままだった。
物事に動じないと言うと、威風堂々とした者でも連想するかもしれないが、言い換えれば羞恥心が欠落しているとなる。自分のようにカトルは恥じらいのない人間とは違うのだから、慣れた振りをしたり無理をする必要はない。たとえ、明け透けな奴が繕う事を可笑しいと思ったとしてもだ。こちらが驚く場面もあるが、すれずにありのまま、はずしているのがカトルらしく、その過剰なリアクションも好ましい。どうやら、守りたいんだな。――それはさながら、『豪胆なカトルの見せる(“しおらしさ”というのか)“臆病”なほどの性癖は、保護すべきものだ』と、希少性の高いものを保全すべき権利を主張する心積もりを持っているかのようだった。
「ベッドに行くか?」
だからこれがミスの原因だったろ。これでは教訓を生かしていないと手遅れながら言葉を継ぎ足す。
「マッサージをしてやる」
取ってつけたと丸出しでいささか不自然に終わる。
それでもカトルはそれを厳しく咎めることはしない穏やかな奴だ。
「トロワ、あのね……」
それは、不安げな声に聞えた。
「何だ?」
「…………」
瞬きを繰り返しているカトルを見る。頬が朱を挿していると思ったら、それが広がるように、じんわりと肌が染まっていくではないか。これはどうしたことだ。
このまま抱き締めたくなる。
――が、衝動でそうすれば歯止めがきかなくなることは目に見えていた。全力疾走をしている人間が、ぴたりと停止できないことと似通ったもの。それに加え、行き過ぎれば戻ることは難しい。つまりは、そうならないようにすることが肝心なのである。
本当はいつでも奪いたいと思っている。カトルの勘違いという下地が出来ているから、いくらでもそう出来るだろうが。
劣情を愛しさで覆い隠し、怯えさせなければいいがと思いながら、カトルを見つめる。
「カトル、逆手にとるような卑怯な真似はしないから安心しろ」
「そうじゃなくて……」
言いよどんだカトルはおもむろに立ち上がった。パジャマが大きく見えるのは躰が華奢なせいだろう。同じデザインでも、身に着ける者によって大きく印象が変わるものだな。
「寝室へ行こう」
そう言って、チラリと視線を合わせてきたカトルが浮かべたのは微苦笑。それは珍しい表情だった。
腰を下ろしたままの姿勢で探るようにカトルを見上げると、小さな唇の両端がきゅっと上がり、少しだけ細めた瞳で逆に見つめられた。
捕らわれたように双眸はそこで固定され、これ以上の詮索は出来なくなった。
包み込むような穏やかさ。優しげなカトルの笑顔は、いつでも抱擁のようにあたたかく感じられた。
聞えていないと思ったんだろうが、見事なほどに筒抜けだ。しかし、指摘するのは止めておこう。
「よし。……もう、どうとでもなっちゃえ、だよ」
そんな呟きが聞え、直ぐにカトルからの聴取が始まった。
「トロワ、明日の予定は?」
「いつもと変わりない」
「それって大変?」
「難なくこなせるものだ」
「トロワは明日の仕事、乗り切る自信はある?」
「愚問だな」
「すぐにでも眠りたい?」
「いや」
「元気?」
破顔しそうになる。おずおずと訊ねるカトルに、何となく言いたいことが見えてきた。しかし……。
「俺はな。……だが、カトルは無理は出来ないだろ。俺はそういうつもりはないから安心しろとさっきも――」
「わかってる!」
カトルが遮る。
「トロワにその気がないのはわかってる。僕だってお互いに仕事があるから、トロワと同じ意見だった。でも、限界があるよ。……好きな人と一ヶ月も――一緒にいて、だっこまでされてさ――なにもないなんて……」
拗ねた口調で言った。いつもは桜色の頬を鮮やかな薄桃色に染めたカトルからそんなことを告げられ、内心では柄にもなく動揺している。
「俺はカトルの仕事に差し障るといけないと……」
カトルの様子に思わず言葉を切る。
心情は透けもせず口調はいつもと変わりないところが、本当に嫌な男だ。デリカシーのなさも合わせて自嘲の念を抱くが、それでも表情は今ひとつ変わらない。
「君はとても理性的な人だから平気なんだろうけど、大変だったんだから。……一緒にいると甘えたくなるから、わざわざベッドを移動したのに、優しいことばっかり。いっしょうけんめいの僕は、自分からはある程度の距離をとろうと思ってるのに、添い寝なんてされたら我慢できるものも出来なくなっちゃうじゃないか! 君が僕をいたわってくれているのはわかるんだけど、それって誘い水だよ。……もう……僕は、ガマンしてたのにぃ。君は、毎日、毎日。毎日ッ……よくも、やってくれたね」
気迫がカトルの鬱積したものは昨日今日のものではないと物語る。積もり積もった恨みをぶつけるような内容も、可愛いとしか感じない。よかれと思ってしていたことがカトルからすれば嫌がらせのようなものだったのだろう。困っていたんだな……。カトルがそんな想いでいたとは思いもしなかった。求めているのは自分ばかりだと思っていたのに。
カトルは“理性”と言ったが、カトルに抱いている本能的な要求を押さえつけていられたのは、嫌われたくない想いからの“忍耐”だったと思っている。
「カトル、お前はいつでも笑ってくれるから、そのことについて不満を抱いているとは考えてもいなかった。傍にいたかったのは俺の勝手だ」
口を噤んだカトルの表情を窺うと、眉を顰めていた。
絵に描いたように唇を結ぶ。怒りじゃない。カトルは悲しんでいる。心のきしめくその音まで聞えるようだった。
自分の非ばかりを責めるようなカトルが、まず自身のことを問題にしないわけがない。あえて一方的に責任を押し付けるような発言をするカトルが、胸を痛めていることは手にとるようにわかった。
自分の言葉で聞く者を傷つけていると思っているんだろう。そんな優しいカトルの奥にある気持ちが見えるから、その言葉で傷ついたりしない。
お前が相手にしている奴は、そんな繊細な男ではないだろ、カトル。
「トロワも時間帯が一定の仕事じゃないから僕以上に大変だと思ってる。だけど、過密スケジュールは慢性化してるんだ。二人とも終わりなく無制限でずーっとこうかもしれないんだよ。ただ禁欲的にしていたら、どうなっちゃうの? 本当に駄目なときは節制だってできるし、自己判断できるでしょ? 精神的に参ってしまったら身体まで悪いほうに引きずられそうだよ。気力が満ちれば身体だってついてくる。と言うか、ひっぱっていくもの。気分がよければ頑張れるって発想を切り替えたんだ。一理あるだろ? ……無理は身体によくない。逆に頑張る弾みにするから。明日一日がんばるから。ね、トロワ」
ああ、わかる。言いにくいことをカトルがここまで力説するのは(カトルをここまで多弁にするのは)、察しの悪い硬骨漢のせいだ。発言を促し、代弁し、そして、不安を打ち払うため、カトルはそうならざるを得ないのか。
それでも、ここまで言っておきながら、真っ赤な顔で下を向いたカトルは、
「……トロワが大丈夫ならで、いいんだけど」
まず控えめに言って、こちらを窺い見た。
どうして、NOという答えが返ると思えるんだろうカトルは。この状況で萎縮したようにチラチラとこうして上目使いに見られると、もうこちらの負けは決まったも同然。
カトルが嫌がることは「抱いていいか?」などと訊ねること。いわばこれはその逆バージョンだ。どんな思いでいるんだ? この言葉を紡ぐのにどれ程の羞恥を押し殺しているのだろう。胸中を思うと堪らなくなる。
今、カトルの胸に手を当てれば、早鐘の音が聞えるはず。これでもし、つれなく「俺は疲れている。明日までの辛抱だ」とでも言えば、カトルは怒りもしないで枕を持ってゲストルームに向かう気だろう。その時に浮かべる笑顔まで想像できて胸が痛くなった。
「僕って意志の弱い人間だね……」
恥じ入るように睫毛を伏せる。
「ならば俺も弱い人間だ」
呟きに、瞳を見せてくれたカトルを抱き締めた。
華奢なのに驚くほど柔らなか抱き心地。そう、これがカトルの感触。最も愛しい人の躰。――この中にある。それだけで安堵する。
「トロワ」
囁くように名を呼んで、カトルの声は静かに腕の中に籠る。抱き締めたときにだけ聴ける音。
身体に縋り付くカトルをきつく抱いて。まず、解禁された頬に唇で触れる。そこで感じるぬくもりと、柔らかな肌の感触は久々で、それだけで至福感に支配されてゆく。覗いた丸みのある白い額にも、厳かに、そっと唇を落とした。
「大好きだって、いつも改めて思えるくらい、こんなに優しくしてもらっていて、涙が零れそうになるくらい、しあわせ。……だけどね、僕はどんどん欲張りになる。……違うな。想ってくれてるって、伝えてくれることをしてくれるから、トロワに欲張りなところが隠せなくなってる。本当の僕はすごく甘ったれで、トロワはうんざりするかもしれないよ」
碧い瞳を見つめながら首を横に振る。そして目尻にそっと口付けた。
甘えてくれるなら、強がるばかりのカトルが、それだけ気を許してくれるということ。わずらわしいわけがない。「伝えてくれる」とカトルは言った。気の利いた豊かな表現力はなく、言葉も足らぬのに、近付いて近付いて、耳を澄まして、汲み取ってくれるんだなカトルは。――こうしてまた、カトルに深く溺れていく。
いつでも思っている。唐変木のくせにカトルを不安にさせたくないと。カトルだけを愛していると、いつでも想っている。
「――カトル――」
呼びかけるしか出来ない。
「すごくわがままで、求めるものが大きいってわかってるんだ。……愛情不足で「寂しかった」って言ったら、怒ってしまう? 君は悲しむ?」
――――泪。
「トロワが、大好きなんだ」
そうしてカトルは泣くんだな。
瞳は直ぐに水で満たされてしまう。それでも濡れた瞳は喜びを見せていた。
涙は悲哀を映すだけのものではないと、カトルはそれを教えてくれた。
「カトル……愛してる」
想いに呼応し小刻みに震える細い躰を閉じ込める腕は、自然と力を強めていく。きつく抱く。「好きだ」と唱え、きつく、抱く。
カトルほどうまく伝えられないだろうが、単純な想いを何度でも言葉にしよう。与えられた声はそのために使うものだろ。それに、この腕はカトルを抱き締めるためにある。
「トロワ。……一ヶ月だよ。寂しかったんだから」
瞳は揺らぐほどに濡れていた。
胸を満たす言葉ごと抱き締めたカトルが、口付けを待つよう眼を閉じる。当然、重なる想いとともに、唇もそれのあとを追う。
しっとりとしたカトルの唇の感触を味わうように、ついばむ軽く触れるだけのキスを何度も贈る。甘い吐息まで取り込むような、唇の触れ合い。まだ、浅い口付け。
「……トロワのバカ。――僕は誘惑に弱い人間なんだよ……」
唇の間で吐息と一緒にゆっくりと零れ落ちたのは、そんな悪態。それも蜜のように甘い。
接触を繰り返しながら、時に緩んだ唇の隙間を舌先でなぞり、カトルの柔らかな下唇を舐める。
ため息と小さな声。
悪戯を仕掛けながら、次第に深くなる。
ゆっくりと、深くなる。
抑圧が解放された反動で性急にならぬよう、ことさらゆっくりとしたリズムで。しなやかな肢体が誰のものか確かめるように、やんわりと唇と手のひらでなぞっていく。
与えられた時間は――カトルが愛撫の最中、眠るまで。
■FIN■
初出/2001.1.7「元気の秘訣おしえます!」から「元気の秘訣教えます」
それに少しだけ加筆訂正しました
それに少しだけ加筆訂正しました
そんなわけで、第二回戦の、トロワ先生でしたー!
トロワの場合、「元気の秘訣」じゃなくて、やつの生きる糧を教えてくれてるような(笑)
たんに元気であることのどうのじゃなく、生きていくなにかを語ってしまっているバートン先生でした(笑)
この二人、実はまったく違うタイプのようでいて、結構同じようなことを考えている似たもの夫婦なんですよねぇ(笑)
読んでいて、おもいませんでした?(笑)
このトロワさん理系ですねと、理系男子好きだという、理系の女性から言われたことがあります。
それって、名誉ですよね。
理系男子好きに言われたというのもですし、理系女子に理系と言われたというのもですし。
「現場視察が好きだ」の風景は、エンドレスワルツのラストの、工事現場みたいなところで、作業着着ているへるめっちのかとるん参照vv
メットカトル、超かわいい~vv(この口調:笑)
そうそう、なんか、このトロワ、笑えますよね。
カトルの一人称より笑える気がするのですが。
本人が真面目なだけおかしいのでしょうか。
読んでくださったかたは、どちらが、笑えると思いました?
トロワの一人称で言われるのは、その心の中の饒舌さをカトルに見せてやればいい!ということです(笑)
頭の中では多弁なのに、体の外へ出る確率が低すぎです、だんな!(笑)
それにしても、カトルのヒイロ直伝というマッサージされてみたいって人いらっしゃいますか?
映像的には凄まじい情景が展開されるのだと思います(笑)
個人的にはヒイロにマッサージ仕込んでもらってるカトルもみたいなぁ。。
ヨコシマ心をくすぐられますvvうひひvv(笑い方が。。笑)
こんな一人称も嫌いじゃないZE★
という、ありがたいおかたがいらっしゃいましたら、拍手やコメントお願いいたしまっすv
(たとえば、トロワサイドとカトルサイドどちらが笑えましたぁー?)
ほんでは、どうも、どうも、お疲れ様でしたーvv
1本で載せるには、長かったです;;
うぷ。。
オレ、がむばった。。(笑)
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むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
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