“ たまには不安になりもするのか… ”
【やつらのもめ事って、いつもこんなかんじさ～♪】



　
　少し不安げなカトル。トロワの言葉を信じないわけではないのだが、あまり自分と居るときも楽しそうには見えなくて……。
「トロワ、キミ……ボクと居ても楽しくないんじゃないの？」
「いや」
　即答での返事。それでも下から見上げる彼の表情はやはりつかめない。
「ボクに気をつかって無理しなくてもいいんだよ……」
　眉を寄せ口ごもったカトルは、俯くと動きを止めてしまった。
「……カトル？」
　気遣うようにカトルの頬に伸ばされたトロワの手を、ピシャリとカトルはなぎ払う。
『…………かなり痛いぞ、カトル……』
　これは、トロワの心の中の声。もう一度トロワが名前を呼ぶより先にカトルがその面を上げた。
　結んだ唇に見開いた瞳。微かに碧の瞳が揺らめいた気がした瞬間、キッとカトルはトロワを見据えた。
「もう、ボクにはキミがなにを考えているのかわからないよぉォォォォッッ!!」
　ジョ●ョ口調が微妙に入った声には泣いているような響きが入り混じる。
「笑ってもくれないじゃないかぁッ！」
　歯を爽やかに光らせて、ニカッとキラリとやって欲しいのであろうか。それは、ちとツライ。
「カトル……」
　人にはキャラクターというものがあって……。と、説明するよりはやく、目線をそらせ横を向いたカトルが、
「もう、いい」
　強引に言葉を切った。
　これはまずい、非常にまずいぞ。
　と、トロワの中で大きく大きく警報が鳴る。
　珍しく動揺したトロワは――――と言っても人にはそうは見えないが、カトルの肩に手を伸ばした。
　そっと触れた瞬間……。スパーッンンッッッ!!!!　カトルの手刀がッ！
　痛みは先ほどの比ではない。
『……折れたかと思ったぞ、カトル……』
　ダラダラと内心で冷や汗にまみれるものの、その表情は、やはり静寂を保つ。
「トロワなんか、知らないッ!!」
　背中向きで地面に叩きつけるように放たれた言葉が、トロワの胸を直撃する。
　知らないとはやはり……嫌われた……と、いうことだろうか……。ブリザ～ド。。吹き荒れる冷風に「心こおらぁ～せて～♪」と高●厳さんのかつての名曲（?）がよぎる。（ご存じない若人は、某道化師の歌のもっともせつなげな部分でも、バックに流しておいてください）
「トロワのバカーーーーーー～～ッ!!」
　とどめのひと言を浴びせながら走り去るカトル。残されたトロワのシッポは今しがたまでの、嬉しげにパタパタとした動きがウソのような静けさで、今は脚の間に巻き込まれていた……。

　シッポに気づけェーカトルーーッ!!!!

　カトルは未だにだんなに耳シッポが付いてるときがあることに気が付いていないのであった。
　視界は直径３．４センチですから…。きっと、一生、気づかない。。おお、カトルよ…。。




■ＦＩＮ■
　

　　

初出「インサイドストーリー　イン　フェアリーテイル」
　　　２００９年１０月１８日発行
　　　それに、少しの加筆訂正をさせていただきました。
　　　クソしょうもなくてスミマセンでした；；