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『NEO UNIVERSE』

ヒイロ×カトル



無人島で繰り広げられる、熱い物語です。
ヒイロは無表情でクールでカッコイイ!!
と評価し愛して疑っていないかたは回れ右してください。危険です。。

熱く野蛮すぎるヒイロが出てきます。
ヒイロは野性の王様やーーー!わーいvv
というかたならOKかと。
とにかく、ワイルドなヒイロです!獣なヒイロです!
急に感情が昂ぶる激しいヒイロです!

ヒイロはあらぶる情熱を秘めているのよ!!とお思いのかたは、
どうぞ、本文を読むから小説を読んでみてやってくだされー。

そんなこんなですが、少しでも楽しめたぜ!というかたは、
是非、拍手やコメントしてやってくださいませ。
どうぞ、よろしくおねがいいたします!!



『NEO UNIVERSE』



 夜になると空には満天の星が輝く。
 どんな星座版も最新式のプラネタリウムでも、まだ再現不可能な、無数の星が夜空に瞬いている。星をさえぎる雲もなく見渡す限り星屑が空を埋め尽くす。
 静かに聞こえてくるものは遠くからの波音と、辺りを覆う草木が触れ合い奏でられる涼しげな音。そしてなにより心を奪われる音である、規則正しい静かな寝息が聞こえるだけだ。
 自然に囲まれた中にぽつりと建つ小屋の中で、カトルが心地好さそうに静かに眠っている。
 顔色、肌の色艶はいいが、死んだようにぐったり眠っているようにも見えた。
 野性の王者である血気盛んなヒイロの愛情表現をひとしきり受けたあとである。それも当然だろう。
 ヒイロにとっては好都合で、なにより素晴らしいという意味で、見た目を裏切る頑丈さを持つカトル。そんなカトルだから、すやすやという穏やかな眠りを迎えられているのだ。ヒイロの相手がカトルではなく常人だったなら、ジェットコースターのような心臓に激しい負荷がかかりそうな、野蛮な行為を前に命はなかったかもしれない。ヒイロは人外の疑いをかけられるほどに野性的な愛情表現をする男であった。が、カトルは小躍りするくらい嬉しくなるような、恐ろしくも丈夫な艶めく麗人であった。
 まるで、ヒイロのために誂えたかのようにカトルは頑丈であったのだ。二人は奇跡のような相性の良さをしていた。
 ショートスリーパーのヒイロと比べ何倍も睡眠をとるカトルの安らかな寝顔を見るのは、ヒイロにとって好ましい時間だ。
 しかし、無尽蔵に体力のあるヒイロは、まだまだ余力を残していた。せめてもう一ラウンド、いや、二、三ラウンド挑みたいのだ。至上の行為であるカトルとのお戯れに興じたいのである。だから、ある賭けを仕掛けてみることにした。
 ぐっすりと眠るカトルの髪を優しい手の動きで撫で、丸い賢そうなおでこをさらす。見えた、額に恭しくも軽くデコピンをピシーンと一発お見舞いした。
「ッくンッ……」
 鼻にかかる鳴き声が零れたが、カトルが起きる気配はなかった。白い肌の中で微かに赤くなったおでこの一部にも愛しさを感じる。ヒイロにとってカトルほどの初奴はいないのである。眉間の皺は深いが、その胸の中をしめているのはカトルへの愛だ。そして、カトルへの一途な性欲だ。
 この、簡単に跡が残るカトルの肌質も愛おしい。おでこに限ったことではなく、柔肌は軽くついばむだけで、いとも容易く行為の名残を紅く刻むことができた。
 ヒイロはさすさすと指先でその赤みを愛しさを込めて撫でるように触ると、もう一度、同じ場所に寸分の狂いもなく先ほどより強くデコピンを打ちこんだ。
「ッキュっ……ン」
 ゼロのバスターライフルを連続発射させたとき以上に彼は真剣だ。そして、それ以上に誤差もない。
 ヒイロはなんでもこなせる理想的なスーパーエージェントであったが、それ以上にカトルを前にしては煩悩の塊だった。なんでもこなせる野性的なスーパーキングオブアニマルなのである。誰よりもカトルを愛し、誰よりもカトルに欲情する野蛮な生き物であった。
(……起きろ)
 まだ、愛情表現といえば可愛く聞こえる、お淫らな行為をカトルとしこたましたいヒイロは、無表情の下で、『起きろっ! 起きろっ! 起きろっ! 起きるんだッ、カトルッ!!』と、呪術者のように宇宙の心という理解しがたいパワーを総動員させて執拗に念じまくった。
 もう一度、可愛らしい丸みのあるおでこにデコピンを炸裂させるべく、ヒイロは指先をこすり合わせ力を蓄える。カトルのおでこを粉砕してしまわないように細心の注意を払うことは忘れてはいないが、カトルが無視できない衝撃は与えるだけの力をヒイロは脳内で算出する。的確に弾き出した、指先の角度と、力の溜め具合でもって、三度目のデコピンをカトルの愛らしいおでこにピチーンッと放った。
「ゃぅんッ!?」
 誰よりも覚醒を待っているヒイロは、その姿に釘付けにされる。ヒイロの心をわっしと掴む愛らしい声を漏らし、長い睫毛がふるふると震える様さえ清らかで綺麗だ。
 目覚めようとするカトルにヒイロの期待は高まるばかり。ヒイロは再び始まる、めくるめく決戦を前に不機嫌にも見える仏頂面の心の中では咆哮していた。カトルが目覚めた次の瞬間には、白目を剥いて高笑いしてしまうかもしれない、危険な香りがする高揚感に支配されそうだった。もう待ってなどいられない。
 まだ、ヒイロには先ほどの行為のときに味わったカトルの甘美な質感や感覚が、各処に生々しく残っている。媚薬のような甘やかさに支配された感覚は、そう簡単に全てを忘れ去ることなどできはしない。
 背を丸めて小さくなっておでこを両手で押さえる。「ぅむむむむ」と声を漏らしそうな形になった控えめサイズの可愛い口は、それでも魅惑的な桃の花びらの色をつけていた。ヒイロの視界の中で、原始人的ミニワンピに身を包んだカトルが痛みに身じろいだ。
 闇夜の中でも、超ミニ丈ワンピから零れた、伸びやかな白い四肢は艶めかしく月の光を受けて輝きヒイロを誘うようだった。




 すべてはこの言葉からはじまった。
『時間の流れのゆっくりしたようなところで、のんびりと過ごしたいなぁ』
 カトルのなにげないそこんな言葉をヒイロは叶えてやったのだ。
 それはそれは野蛮な方法と無謀な行動力で。
 ヒイロはカトルを無人島へといざなった。
 地球にあるあらゆる島を調べ尽くしカトルのために探し出した。その島は初夏の陽気を思わせる気候をした、常夏の楽園のように穏やかな島だった。
 ただ、本当になにもない無人島だったのである。
 多くの動植物がいるが、カトルならそれを喜んで受け入れるだろうとヒイロは思った。そして、そういうものがあればカトルは孤独を感じないだろう。ヒイロは無人島で暮らすカトルの屈託のない笑顔を夢見て、最高の環境を用意したつもりだった。
 こうして、ヒイロとカトル二人きりの無人島でのかくも楽しき生活が始まった。


 まさか無人島に(しかも、無期限で)連れて行かれると思ってもいなかったカトルは、三日分の着替えだけを持ってきていた。
 島で生活する中でカトル定番の淡いピンクのシャツは全て、今やノースリーブのワイルドで艶めかしいミニワンピへと姿を変えていた。
 ヒイロが乱暴に引き千切り、勢いよく弾き飛ばすたび、元の姿へとお直しすべく、付け直されていたボタン。それも、幾度も夜を越えると、何度でも同じ所業をくり返すヒイロを前にしては付け直すことが無駄だとわかった。今はこの服にボタンが付いていたことは、ボタンホールの痕跡だけが名残となっていた。
 袖も無人島に着いた初日に無残に破られ、もう跡形もない。着替えに持ってきていた三日分のシャツもきっちり枚数と同じだけの日数で等しい運命をたどった。袖と繋がっていた身頃の部分の布が引き攣れているのが、どれだけヒイロが乱暴にその衣服を引き千切ったかという証拠だ。破損箇所は加害者の力ずくの行為に為す術もなく、布を傷めただけだった。そのときの傷跡のようにカトルのシャツの破け方はなにか、異様に野蛮で淫らなものを感じさせる乱雑な破れかたをしていた。
 どうもヒイロはカトルを見ると興奮のあまり力加減が出来ないのか、乱暴に衣服を破り去り取り払おうとする癖があった。荒ぶる激情と激しい衝動を一時も抑えられないのだ。
 貧乏揺すりでもあるまいし、癖というにはあまりにも罪深いのだが。
 ボロボロになった袖の部分をヒイロが器用に紐状に引き裂いて、そのワイルドなシャツの前を合わせて留めるための紐にしてくれた。“くれた”というと、親切なように一見聞こえそうな気もするが、カトルの衣類をボロ布にしてしまう、激しい愛情表現をする男のせめてもの罪滅ぼしなだけだ。
 これで、償える程度の罪ではないともいえるのだが。
 お陰で身持ちの固い露出の極端に少なかった良家の子息であるカトルは、今や、サービス満点の出で立ちをしている。なぜかヒイロから捧げられた美しい一輪の花を金に輝く美しい柔らかな髪のあしらって、心ばかりのおめかしをしているという。……そんなヒイロが滾り喜ぶだけのセクシャルで過剰に可愛らしすぎる姿を、父ザイードが見たとしたら、卒倒するだろう。破廉恥すぎる。
 しかし、カトルは一緒にいるのがヒイロだという安心感と、徐々に露出が増していったせいで、現在の無人島での原始人的なスタイルに違和感をあまり感じていなかったりする。こういうところは、実に大らかなのである。
 カトルは頼もしく思っているが、そんなお色気ショットを前にヒイロは誰はばかることなく、いつも激しく欲情しているという事実はカトルの目にはどう映っているのだろうか。
 伸びやかでほっそりとした腕に魅了され、晒された滑らかな手触りを想像させる太ももに釘付けになっている。華奢な躰のつくりを印象付けるような鎖骨に心奪われ、肩の丸いラインに生唾を飲む。カトルのあでやかな姿を凝視するヒイロの真っ直ぐな瞳は、普段はうちに秘めた激しさを丸出しにして燃え盛っている。無人島に来る前より、ヒイロの愛情表現が随分とわかりやすくなったと、この程度にとらえているふしがある。カトルは罪深いほどに、あまりにも無防備だった。無邪気なのん気さ、それもヒイロとっては可愛くてたまらないカトルのチャームポイントなのだろう。
 ヒイロとカトルどちらも罪深いが、力が有り余っている野性的なヒイロを前に、困ることはあっても、カトルが怒り出すことはなかった。元来の穏やかな性質のせいもあるが、その野蛮で乱暴な事の推し進めたかもヒイロなりのストレートな愛情表現だと、カトルが素直に理解していたからだ。だから、ヒイロに優しく穏やかな心からの笑みを向けるのだろう。胸をしめるいっぱいの愛情を込めて。
 それに、ヒイロは闇雲に乱暴にカトルを扱っているようで、実質、カトル本体には傷をつけたことがない。
 これは、まるでありえない奇跡のように聞こえるかもしれないが、それが事実なのだから、なによりのヒイロがカトルを大切にしているという至純な愛の証明だろう。
 無闇に力ずくでなんでもカトルにゴリ押ししているようで、そう単純なものでもないのだ。
 勢い余ってシャツやズボンは木っ端微塵にしてしまっても、カトル自身には危害は加えていない。野蛮さが増すのも特別な想いを寄せているから。
 こう見えてヒイロはどこまでもカトルにのみ優しい生き物なのである。ただ、その優しさが少しばかりわかりづらいというだけのこと。それでも、ヒイロがカトルに対してだけとる言動を見ていれば、カトル以外には決して見せない一面ばかりで、甘いと言ってもいいほどの接し方をしていることが、マニアになら、……もとい、観察眼の鋭い者にならわかるだろう。
 実はクソがつくほど頑丈だが、見た目はたおやかで儚く繊細そうなカトルを、見事なほどに、乱暴さと丁重さをゴチャ混ぜにして、ヒイロ独自の完璧なさじ加減で壊さないように扱っているのだ。そのややこしい状態で接することを続けられるのは、ひとえにカトルへのひたむきな愛ゆえである。

 ヒイロのほうは長く生活するうちに、カトル以上に無人島の住人らしくワイルドに活発に活動し、縦横無尽に島を闊歩し、自分の服装を滅茶苦茶に、ボロ雑巾以下にした結果、腰みのスタイルという状態になっていた。
 どれだけボロボロでも、スパッツを穿いていてくれるあいだは寛容なカトルはなにも言わなかったのだが、最後の命綱のスパッツをヒイロがついに野生に還るように、勢いよくビターンッと地面に叩きつけて脱ぎ捨てたとき、悲鳴を上げた。
「ヒぃイロォーーーーッ!! ボ、ボクがなんとかするから、そんな格好してないでーー!!」
 もはや野生に返り自然と一体化したかのように全裸になったヒイロの手を引いて、カトルはその姿を見ないようにしながら、草むらへと誘った。
 初めヒイロは珍しいカトルからのお誘いに、我が身に起こった幸運を疑った。珍しいというか初めての出来事であるのだから、興奮は最高潮を迎えた。
 まさか、あの折り目正しい品行方正を絵に描いたようなカトルがこんな、眩しい青空の下の野外で、コトにおよぶことを望むとは思わなかったのだ。そして、さらにまさか、自分のまっぱがカトルのハートに火を点けたとは意外すぎた。ねんねで奥ゆかしい行為が好みだと思い込んでいたから、カトルにこんな側面があったとは。ついにヒイロ・ユイ、カトルを開眼せし男になったか。
 そう思うと感慨深いものがある。
 恥じらいある受身なカトルもいいが、まだ見もせぬ小悪魔のように誘い込むカトルにもついに出逢えるのだろうか。と、カトルの後に続きながら、ヒイロは妄想を全開にさせていた。
 カトルが望むならヒイロはどんな場所でも時間でも、なんでもOKだ。何者かに見られたとしても、所詮それも全て獣どもである。青姦だって朝昼晩とフルコースでも受けて立ってやる体力は持ち合わせている。ただ、それではカトルが持たないので、インターバルをはさんでも長期決戦になるだろう。それもいい。それでもいいのだ。カトルが誘ってくれるなら、断崖絶壁に先っちょで落ちる心配をしながらだって、相手がカトルならば身体はきっちり機能する。いつでもどこでもカトルとの行為ならスタンバイできるのだ。カトルを前にすればヒイロのモノが役に立たない状況などなかった。
 まさか、あの、あの、ねんねのカトルの要求が自分の想像の域を遥かに凌駕しているということが起こったら、どんな顔をしてしまうだろう。
 刺激的な要求でも可愛らしければ、歓喜の雄叫びを上げ「死ぬほど、巧いぞッ!!」とカトルに覚悟するように自分の手練をアピールすればいい。小悪魔的で意外なエロスを求められたら、その、らしからぬ新たなるカトルにも、「俺は、ヤメナイッ!!」と大声で言って、こちらも途中棄権させないつもりだと宣言し、気合でねじ伏せ、陥落させてやろうではないか。
 さあ、カトルの望む淫らな行為をとくと見せてもらおう……。真っ向勝負だ。
 ヒイロの脳内はあらゆる脳内麻薬が溢れ出て、興奮状態を抑えきれないほど、高まるだけ高まって滾りきってきていた。過去のどんな苛烈な戦闘下にあったときにも、どんな淫靡なものと遭遇しても、これほど頭に血が上ったことはない。心臓の音が頭の中から聞こえている気がするほど、大きく鳴っているが、荒くなる呼吸にかき消され、熱気むんむんな鼻息とも合わさって、全ての音が相殺されていた。
「ヒイロ、ここにしよう」
「カトル、お前はここを選んだのか」
「うん」
 連れてこられたのは、どこまでも草原が広がる平地だった。
 背の高い草ではあるが、二人が折り重なって横になったりすれば、ゴソゴソという動きは周りにバレバレだろう。怪しげな草の動きと意味ありげな葉の鳴る音だけでも、なのをやっているのか、丸わかりだ。なにって、ナニをやっていることがだ。
「随分オープンな場所を選んだな……」
「そうかなぁ。どこでもよかったんだけど。これなら今から使う材料に囲まれてるみたいで便利でしょ」
 屈託なく笑うカトルの清純さは格別なものである。いつものヒイロが愛する、天使のように清らかでふわふわと柔らなか存在だと感じさせてくれる。そんな、エンジェルカトルが何をどうナニに使うつもりなのか。ヒイロにはさっぱりわからない。天使は人間とは違うアイテムを使うものなのだろうか。
 お陰で、いつもの不機嫌に見える仏頂面も通常の倍ほども、いかめしいものになっていた。
 恐ろしい顔つきすぎる。この顔で街を歩けば、誰もヒイロに近づくものはいないだろう。いるとすれば、それは処理できないほどの山盛りの通報を受けた勇敢な警察官くらいのものだ。手に得物をもって集団で捕獲しにくるだろう。
 ヒイロは辺りを見渡し、カトルが自分も教えてやってもいない、新境地に一人で旅立ってしまったのかと思い、急激に悔しくなった。なにを道具にするのかもヒイロには特定できなかったし、場所がどこでもいいと言い出すカトルもヒイロの想像の範疇を超えていた。しかも、その場で使うものを自作すると言い出すとは。自作ならば自分の十八番だと思っていたのに。なんだ……。ふいにヒイロの目頭が熱くなる。
 知らない間にカトルはオトナになってしまったのか。淫らな知識はどこから得たものなのだろう。カトルを慕う小動物はそういう知恵もカトルにせっせと運んで来ていたとでもいうのだろうか。カトルにことさら懐いているコモドドラゴンの入れ知恵かもしれない。そうだ、あいつなら。
 茫洋とした顔の下であいつはそんなことを考えていたのか。淫猥な巨大生物だ。今度見かけたら尻尾を持って百回は振り回し、星になるよう遠くの空に投げ捨ててやろう。そのくらいの報復は許されるだろう。これは動物虐待ではない。種を超えての男同士の闘いなのだ。
 どこまでも眩しいほどに清らかなカトルは、もう、いなくなってしまったのか。ヒイロのペースで過剰なお戯れに邁進する毎日を送っている、無人島が桃色にライトアップされそうな淫らな享楽的な有様でも、カトルの至高の清らさかだけは損なわれずに、何者にも、何事にも染まらずに、ずっと、ずっと奇跡のように咲き誇っていたというのに。これからも、それだけは変わらないと信じ、その高潔な魂を愛し続けると心に誓っていたのに。
 だが、こんな想いで煩悶しつつも、カトルとの甘美なお戯れはやめる気はさらさらない、ふてぶてしいヒイロだった。
 いろいろな思いが交錯しているヒイロをカトルは何と見るのか。いや、卑猥な全裸姿ゆえ見ないように視線を逸らせている。そんな状態のカトルは、ヒイロに、
「ねえ、ヒイロ、ここに座ってて」
 と、お願いしてきた。
 その、こくんと小首をかしげて承諾を求める姿が、可愛いの可愛くないので言えば、ヒイロの眉間の皺がグランドキャニオンと張るくらい見事なものになったほどに愛くるしかった。
 可愛いものを見て感激しても、眉間に皺が寄る輩もいるのである。それがヒイロだ。
「草むらに隠れて、座っててほしいんだ。あの、ほら、恥ずかしいからね」
 真っ赤になった顔でカトルはもじもじしている。
 そういうプレイスタイルなのかと思い、自分の好みのそれをお願いするときも、やはり清純な雰囲気は寸分も損なわれることはなく、どんな状況下においてもカトルは妖精よりも麗しく可愛かったと、ヒイロは心底満足した。そして、カトルがこうして望むなら、どんな卑猥で破廉恥な願いも叶えてやろうと、心を改め白目を剥いて高笑いしそうになったのも束の間、
「じゃー、なるべく早くするから、待っててね! ボク、頑張るから! ボクがもういいっていうまで、そのままでいてよ。お願いだよ、ヒイロ」
「なにをするんだ、カトル?」
「なにって、ヒイロの身につけるものを作るんだよ! 腰みのくらいあったほいがいいでしょう。だから、待ってて!」
 そこで身を隠すべく座っておくように重ねてお願いをして、カトルは一生懸命ヒイロのために急いで腰みのを手作りしたのだ。
 ヒイロは、言葉も出なくなるような、強大な肩透かしをくらった。
 だが、すぐさま、抱えた衝動を堪えきれずに、一方的にそうだったという思いから、
「俺が、俺が、俺がエロだァァァァーーーーーーッッ!!」
 力の限り空に向けて大きく叫んだ。
 そうして、丹田から声を出し絶叫したことによってすっきりすると、どこか、安心した気持ちになった。ヒイロはこう見えて、なかなか表に出ないだけで喜怒哀楽が激しい。
「な、なにッ、ヒイロ!? どうしたの?」
「いや」
「な、なんでもないの?」
「ああ」
 大声を張り上げ気が晴れたので、ヒイロはしれっとしている。
 いきなりの意味不明な言葉での大絶叫に、びっくりしたカトルはキョトンとしてナゾを抱えたままである。だが、ヒイロが唐突なのはいつものことであるし、本当は振り幅の大きい激しい気性の持ち主だとよく理解しているので、あまり深く考えていないようだった。ヒイロの動揺からの挙動不審な行動も、普段からの奇行のお陰でカトルには疑問視されなかったようである。
 ヒイロは優しく微笑むカトルを見つめながら、心の底から安堵した。エンジェルカトルはやはり、穢れを知らない美しくも純真無垢な存在だった。
 そう、愛してやまないカトルはやはり、ヒイロが良く知る、まったくすれていない、あっち方面の知識が欠落気味の、そこもまた可愛いカトルだったのだ。

 草むらで佇んで、手を動かす姿は、まるで、花冠をつくる妖精のように愛らしいものを連想させるが、これはあくまで野性の王様の腰みのを急ピッチで製作しているのである。製作者が愛らしいだけに、生まれる違和感が半端ないものになる。たまたまこの光景を目にした者がいれば、昨今はフェアリーも腰みの製作をするのかと思わせるファンシーな絵力があった。
 ヒイロは自分だけならこの無人島にある洞窟にでも居を構えればよかったのだが、カトルのために小さいながらも家を造った。フルハンドメイドの自然素材で造った小屋である。ヒイロはどこまでも優れた能力を数多く持つ超人だった。
 寝心地の良い寝所を設けたお家にカトルは酷く感動した。それはすべて自分のことを考えて、少しでもカトルが心地好いようにとのヒイロの心配りだとわかっていたから、本当に嬉しかったのだ。毎日の健やかな睡眠はそのお家の、ヒイロのお陰。だから、自分もなにかヒイロのためにしたかったのである。ささやかでもお礼をしたいと常々思っていた。
 その機会がついに訪れカトルは嬉しくてしかたなかった。二人でおくる無人島の生活は楽しいがヒイロに教えてもらうことばかりで、自分がヒイロの足手まといになっているのではないかと危惧するときもある。元々ヒイロの意思で愛するカトルの健やかな笑顔のためにこの地に二人で降臨したのだから、そんな心配は杞憂なのだが、そのヒイロの愛情と厚意を理解しつつもついつい気をもんでしまうのも人情だ。
 この腰みのを上手く作ることができたなら、ヒイロがもし喜んでくれたならば、これから先もカトルはヒイロのために腰みのをせっせと作っていこうと決心していた。好きな人のために自分ができることがあるというのは、本当に嬉しいこと。だから、まず、一作目になる初回の今が勝負だと思った。カトルは真剣に真心こめて自分のヒイロへの愛を織り込むように腰みのを作っていた。
 カトルの作業風景を見ているうちに心も落ち着いてきていた。熱中するカトルも実に可愛らしいと見守るヒイロは思っている。そんな心のゆとりができた。
 猥褻咎なダーリンを真人間に近づけるべくカトルも必死なのだが、当のヒイロはどこ吹く風だ。むんむんと唸りそうに懸命に作業にあたるカトルを面白く愛おしく感じているのだった。
 仏頂面で感情が平坦だと誤解されがちなヒイロだが、感情が表に現れる沸点のようなものが、常人とくらべて異常に高いというだけで、心の中にはいろんな思いが渦巻いているのだ。カトルに対する愛情も深く濃い~ものがある。
 カトルが脇目もふらず一心に作業に没頭しているのが、自分の腰みのを作るためだという理由は、十分にヒイロを喜ばせた。
 それでも、ヒイロが立ち上がる気配にはカトルも敏感に反応した。
 製作中も周囲に危険が迫っていないか、警戒のために周囲を威圧する眼光鋭い光線を放って全裸のまま仁王立ちしようとするヒイロを、カトルは何度も「大丈夫だからぁ! ちゃんと座っててヒイロぉッ!」と真っ赤な顔で慌てながら押し止めた。カトルを作業に集中させてやれないものか。わざとやっているのなら、かなりのいじめっ子ぶりである。ヒイロは自分一人で楽しみを噛み締めるタイプのため、簡単には口を割らないので真相は藪の中。一応は建前であってもヒイロの良心を信じてみよう。

 無人島に来てから、カトルは動物たちに愛され、カトルに懐いた動物たちは熱心に御裾分けの木の実などをプレゼントしてくれた。カトルは無人島のエンジェルになったのだ。そしてヒイロは全ての動物たちを本能で屈服させた。
 ヒイロは持ち前の威圧感だけで天よりいかづちを振り翳し、全ての動植物を震撼させる存在のような恐れられ方をした。そう、カトルがまばゆいばかりに神々しいエンジェルなら、ヒイロは全ての恐怖の覇者・王者になった。
 畏怖すべき存在ヒイロを王だと認めた動物たちもこぞって島の安寧を祈り、ヒイロに恐れをなして我先にと果物などの貢物を捧げた。
 それがなくてもヒイロは手掴みや釣りなどで魚を取ってくるし、高い木に登ってフルーツなどももぎ取ってくる。そんなこんなで、縦横無尽に島を駆け巡るヒイロの大活躍もあって、無人島でも二人の食生活は潤っていたし、ヒイロとカトルに危害を与える勇気のある動物たちもいなかった。まさに、ここはパラダイスだった。
 それでも、カトルに危険が及ばないように警戒を怠らないのはヒイロの愛なのであるが、人間の尊厳として大事なところくらいは隠しておいてほしい。凛々しい面構えに野性的だが孤高の気高ささえ感じさせる顔面偏差値最高値の男前であるヒイロは、褒め称えられるのは顔の造作ばかりではない。鍛えられた鞭のようにしなやかな鑑賞にも堪えうる美しい肉体を有していたが、その全てを晒すことに対してあまりにも惜しげもなかった。
 恥ずかしいのは全裸になるヒイロではなく、その姿を目の当たりにしなくてはならないカトルのほうなのだ。どんなに褒め称えられる美術品のように素晴らしい身体でも、無造作にそこかしこを足音もなくのしのしと歩きまわり、敏捷かつ豪快に走り跳ぶヒイロを見る側からすれば、羞恥を強く感じる対象でしかない。カトルにはまともな羞恥心と判断能力が備わっていた。
 場所が場所なら猥褻さゆえに捕まってしまうというのに。まさかヒイロがそんな行動をとる要因のひとつに、頬を濃いピンク色に染めて恥ずかしがるカトルがツボだからということがあると知ったら、カトルはどんな顔をするだろうか。
「ヒイロ、出来たよ! 君のために一生懸命つくったよ。着てくれるよね」
 あくまで、隠されていない最後の砦の部分に目線がいかないように、カトルはヒイロの瞳を見つめながら、にこりと微笑んだ。そっと、ヒイロの手を握り手渡す。
 首から上のビジュアルだけ見ていれば、格別に美しい二人である。爽やかに晴れ渡る青空の下、まさか、こんな軽装備で見つめ合っているとは誰も思うまい。
「ああ、無駄にはしない」
 カトルからの贈り物にヒイロは、ふんぞり返って笑い出しそうなほど上機嫌になったのはいうまでもない。言葉と比例するように力強くすっくと立ち上がり、腰みのを装着しようとしたヒイロに、カトルは慌てて思いっきり抱きついた。
「ヒイロ、ヒイロ。あのね、着てくれるのは嬉しいんだけど、向こうを向いてつけてよ! あのね、恥ずかしいからっ」
 真っ赤になっているカトルの恥じらいの百万分の一ほどの羞恥心もないヒイロの全裸を見ないためには、目を背けるか、逆にこうしてぴったり密着してしまうしかないのだ。
 すがり付いていたヒイロの胸をトンと押して、今度はカトルがヒイロに背を向けた。
「着けたら言ってね」
 草むらにちょこんと座ってヒイロの反応を待つ。元ピンクシャツである、原始人ルック的現ミニワンピから伸びた脚を見るようにカトルは目線を下げている。この昔では考えられない露出の高さも、もっと露出度の高い野蛮なヒイロのせいで麻痺してしまって、違和感を感じなくなってきている。慣れとは恐ろしいものだ。
「どう。どこか変じゃない?」
 優しげに尋ねるカトルの声は穏やかだ。春風のような心地好さを感じさせる癒しの存在だ。
「最高だッ!!」
 高らかな宣言。ジャストフィットした腰みのをつけたヒイロは、座っているカトルを感動に任せて抱き上げた。
 横抱きに抱え上げる。目線の位置が同じになったヒイロにカトルはにっこりと笑いかけた。
「気に入ってくれたぁ?」
 カトルの声も喜びで跳ねる。
「ああ、これからはこれを愛用する!」
「ありが、ァンッ!」
 お礼を言おうとしたカトルは、噛み付くように乱暴に素早く口づけられた。
 ヒイロのキスは始めは痛みを感じさせるような切なさがある。数度唇を重ね直しながら合わせていると、しっくりと馴染むようになってくる。深く口づけるほどに心地好いものへと変化してくる。
 微かに生まれた唇同士の隙間にカトルの切ない声と吐息が落ちた。
「……ぃ、いろぉ」
 舌足らずは酷くなり、想う彼の名前を呼んでも不鮮明なものになる。そのたどたどしい声もヒイロの全てを掴むもの。ムラムラとするだけだ。
 最初は添えるようにヒイロの肩に手を置いていたカトルだったが、キスが深まっていくうちに、無意識で強張るままにその首に腕を回し、しっかりとすがり付いていた。

 腰みのをつけさせることは出来たが、ヒイロの性欲にセーブを掛けることは出来そうもないことが、カトルにはわかるときが来るのだろうか。
 カトルが蠱惑的であり続ける限り、ヒイロの想いが潰えることなどないだろうから、要求が増すことはあっても、減退する日などこないといえた。
 無人島の夜は今日も熱く淫らに過ぎてゆくのだろう。



■FIN■




2013年6月上旬 書き下ろし

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HN:
たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。

小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!

「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★

しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。

カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!

ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)

我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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