~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~
『ヒイロと遊ぶ日!』
ヒイロ(?)×カトル
お子様本からの番外編。
ヒイロとカトルが登場の小説ですv
噂でトロワも出てはきますが。
これは、リクエストを戴いたものになりますv
リクエスト内容は
「カトルに言いなりのヒイロ」
というものでした。
ちゃんと、そうなっていると良いんですけど;;
本当は本編設定を期待していただいていたかもしれませんが、
本編だと難しすぎたので、
申し訳ないのですが、パラレルにさせて戴きました。
本編は言いなりのヒイロというイメージより、
「率先してカトルの面倒を見る先回り的ヒイロ」
といった感じが自分の中で強くあったので、(笑)
難しかったんですよねぇ;;
なので、視点を変えて、自分の中で無理なく
ヒイロがカトルのお願いを黙々ときく設定を思いついたので、
それを書きました。
ホント、本編設定じゃなくて、申し訳なりません;;
これが、ワタクシなりの、ヒイロとカトルの構図です(笑)
少しでも、楽しんで戴けるかたがいてくださると、幸いですv
そして、リクエストくださったH様が
ガッカリされていないことを祈っております;;
それでは「本文を読む★」から、小説になります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
少しでも、楽しめたというかたがおられましたら、
気軽に拍手やコメントいただけると嬉しいですvv
ぜひぜひ、反応をしてやってください!
それが、励ましや次への糧になりますのでv
褒めて伸ばしてやってください(笑)
あ!カトルの舌足らずが炸裂しております。
誤字ではありませんので、
フィーリングでお願いします(笑)
ではでは、どうぞ~♪
ヒイロ(?)×カトル
お子様本からの番外編。
ヒイロとカトルが登場の小説ですv
噂でトロワも出てはきますが。
これは、リクエストを戴いたものになりますv
リクエスト内容は
「カトルに言いなりのヒイロ」
というものでした。
ちゃんと、そうなっていると良いんですけど;;
本当は本編設定を期待していただいていたかもしれませんが、
本編だと難しすぎたので、
申し訳ないのですが、パラレルにさせて戴きました。
本編は言いなりのヒイロというイメージより、
「率先してカトルの面倒を見る先回り的ヒイロ」
といった感じが自分の中で強くあったので、(笑)
難しかったんですよねぇ;;
なので、視点を変えて、自分の中で無理なく
ヒイロがカトルのお願いを黙々ときく設定を思いついたので、
それを書きました。
ホント、本編設定じゃなくて、申し訳なりません;;
これが、ワタクシなりの、ヒイロとカトルの構図です(笑)
少しでも、楽しんで戴けるかたがいてくださると、幸いですv
そして、リクエストくださったH様が
ガッカリされていないことを祈っております;;
それでは「本文を読む★」から、小説になります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
少しでも、楽しめたというかたがおられましたら、
気軽に拍手やコメントいただけると嬉しいですvv
ぜひぜひ、反応をしてやってください!
それが、励ましや次への糧になりますのでv
褒めて伸ばしてやってください(笑)
あ!カトルの舌足らずが炸裂しております。
誤字ではありませんので、
フィーリングでお願いします(笑)
ではでは、どうぞ~♪
『ヒイロと遊ぶ日!』
■■■
ヒイロへ
こんにちは。カトルです。
ヒイロはお元気ですか?
このごろヒイロが お家に遊びにきてくれないので、すごくさみしいです。
はやくまた 遊びにきてください。待ってます。
カトルより
■■■
もしもし、いぃおなの? ぼくだよ。かちょるだよ。
いぃお、元気? いしょがちぃの? お時間があったら、遊びにきて。ちぃろに会いたいよ。おねがいだよ。ちぃりょ。
「かならず、向かう」
「え? ひぃお、来てくれるの?」
カトルが驚いてそう言った時には、すでに電話は一方的に切れていた。
一方的にかけてきて、一方的に切る。そんなところも、カトルはなんだかヒイロらしい気がすると好意的に受け取っていた。
■■■
ヒイロのスケジュールに無理をさせないように、今すぐにでも、すごく会いたい気持ちを押し殺して、できるだけヒイロにかかる負担や迷惑が小さくてすむように気遣い、カトルから手紙が送られてきた。
手紙と言う点が、ものすごく会いたいが、ヒイロを困らせたくはない幼いカトルなりの葛藤の証だった。
そんな心優しく思慮深いカトルを、ヒイロは心からけなげで可愛いと思う。
異様にクオリティーの高い「ヒイロ」の絵が手紙に添えられていた。美術的な素養もあるとは知ってはいたが、三歳児ということを感じさせない圧巻の似顔絵だった。マグアナック隊と言うカトル専属の親衛隊の中の絵心のある一人が描いたといっても通用しそうな代物だったのだ。上手すぎて、もう妙に笑えるレベルだった。
それから、手紙では漢字を使用していることにも驚いた。以前にもらった手紙はひらがなカタカナオンリーだったのだ。わずかな間に急成長しているようだ。
それに劣らぬ、著しい発達を見せる、自分の息子の異様な成長ぶりを棚上げしているヒイロ。
手紙を受け取ったときからスケジュールを調整していた。ヒイロはこの可愛いお子を無下にできないのである。
カトルは甘え上手な声色と物言いをするが、まったくの無自覚だ。意識的に人に甘えるのは、カトルにとっては苦手なことのひとつだった。
無意識で、人にこんな庇護愛やなにやらを刺激する仕種や声や口調をしているのだから、わざと甘え上手を狙った日には、どうなってしまうのだろう。そら恐ろしくもある。
そもそもヒイロはカトルの父、ザイードと親交があるのである。
同じ歳の子供がいるということで、なにげなくザイードがヒイロをカトルに引き合わせたところ、いやに、否、異常にカトルがヒイロになついてしまったのだった。
電話をくれたが、後日来るということを言っていると思っていた。それなのに、ヒイロは神出鬼没に近い形で、そっけない電話一本をよこし、いきなり現れた。
「ちぃおーーーー!」
思いがけずヒイロが来たとわかったカトルは、嬉しさで身体が弾け、動き出したように、全速力で廊下を走り抜け、猛ダッシュで大好きなヒイロに飛びついた。
抱き上げると、カトルはヒイロの首に腕を回して、親愛のハグをする。
「きゅうに来るから、びっくりしちゃった」
「電話で行くと言っただろ」
「ああ、ああ。あれって、すぐに来てくれるってイミだったんだ。『こんど』のことだとおもってたから、びっくりちたよ。でも、いぃおが来てくれてうれちぃー!」
こんな無条件で自分の来訪を喜んでくれるカトルという存在は、無感動気味のヒイロからしても、『喜』の部分を強く刺激されるものだった。
そうだ。この無償の愛を向けてくれることが嬉しくて、ヒイロはカトルにお願いされると、いそいそと時間を捻出し出向いてしまうのだろう。
「いぃおにもぼくと同じ男の子がいるってホント? 父上が言ってたんだ」
「確かに息子はいるが、妙に自立したやつだ。歳はカトルと同じ三歳だ」
自立した三歳児とは気になる存在だ。
「ぅへぇ~」
同じ年齢と聞いて、カトルはますます親近感を抱き、興味を持ったようだった。
「名前は“トロワ”だ」
「ちょろあ?」
「ああ」
ヒイロはカトルの舌足らずを放置している。自分も無抵抗に滅茶苦茶な呼ばれ方をしているから、そのくらいは気にするなということか。
「会ってみちゃいなぁ」
「無口だぞ」
「いぃおもぼくと、おはなちちてくりぇるよね。だから、きっと、だいじょうぶだよ」
ヒイロを見つめながら、カトルは純真なキラキラとした笑顔を浮かべる。
ヒイロは想像してみた。我が家の無愛想・無口な三歳児トロワと、表現豊かなカトルを引き合わせてみると、どんな反応が起こるのだろう。
カトルの言うがままに行動してしまう自分という存在があるので、トロワにも意外なことが起こるかもしれない。
「おっきい、いぃおと、ちっちゃい、いぃろ!」
無邪気にジャンプしながら両手の平を天に向かって突き上げる。カトルは大好きなヒイロが二倍になると思い、とても嬉しそうだ。
「あまり容姿は似ていない」
「ぐぇッ! ど、どうして!?」
残念さ満開でカトルは絶望的な表情を浮かべるが、こればかりはカトルの願いどおりにすることは、ヒイロにもできないことだった。
「カトル。おまえは外泊はできるのか?」
「がいはく?」
「自分の家以外のところへ泊まったことはあるのか? 夜になって泣きだしたりはしないんだろうな」
「父上が、いそがしくて、ご本をよんでくれなくても、ぼくはちゃんとねむれるよ。泣いたりしないもの。ひぃおのお家にお泊りしたときには、ちぃろがご本をよんでね。父上がいないときは、らちぃーどたちが、よんでくりぇうんだよ」
カトルは同年齢の男児よりも、おしゃべりが上手で多いようだ。このくらいの年齢なら、まだまだ、言葉数も少なく、単語で話して自己完結してしまう子も多い。すでに長い文章もうまく話せていた。
そのくせ、幼く感じられる。それはただ、カトルの子供色が強く出てしまう、その舌足らずな口調のせいだろう。
いぃろ、高い高いして!
ひぃお、おウマしゃんになって!
ちぃろ、ねんどであそぼ!
いぃお、ご本よんでー!
ひぃりょ、お歌うたって!
ちぃりょ、おんぶちてぇ!
いぃりょ、ブロックーッ! カッコイイものちゅくろぉ!
天真爛漫に矢継ぎ早に提示されるカトルの要求を全てのむヒイロ。
ヒイロは若干三歳児であるカトルの言いなりだった。
人にはわからないだろうが、ヒイロはただただ喜びをもって、カトルからの可愛いお願いをすべて飲む、従者に徹していた。ヒイロはこうみえてカトルとの時間を楽しんでいるのである。カトルと過ごす時間は、ヒイロにとってこれ以上はないという至福の時だった。
常の自分のマイペースを崩さない、ヒイロの姿を知るものが見れば目をむくことだろう。
どうでもいいが、奇跡を感じるほど、カトルは一度として正しく「ヒイロ」と言えていない。ありとあらゆる発音で間違い続けている。ここまで来ると、いっそ神がかり的で感動に値する。呼ばれているヒイロが放置し、とがめないのだから、お子様カトルはこれでいいのだろう。
「ちぃいお! かけっこしよう!」
庭の一部にスタートとゴール地点を設け、かけっこが始まった。
開始早々、ヒイロがブッチギリの速さを見せつける。ぐんぐんカトルの姿が小さくなった。
この男、子供相手であっても手加減や一切の妥協をしないのだ。
ヒイロがゴールしてから、遅れに遅れてカトルなりに一生懸命、てってけてってけ、走り続けている。
その絶望的なスピードの差を見せつけられても、めげずに最後まで全力疾走してくるお子を、ヒイロはけなげな初奴だと思い、見つめていた。
「ぃいおーーーーッ!」
がばぁっーとカトルは走ってきた勢いのままにヒイロに抱きついた。息を切らしながら、ニコニコ笑っている。嬉しそうに見上げてくる、穢れなき瞳が眩しすぎる。
天使というものがもし実在したら、きっと、カトルのように清らかで美しいのであろうか。そして、カトルは天使の存在を凌ぐほどに言動が愛らしい。ふわふわと揺れる白金の髪。白くて柔らかなきめ細かな肌。純真な美しい碧の瞳。ひだまりのように穏やかであたたかな心象。心根の純粋さと同じく心身ともに麗しかった。
「いぃおー、すごいねぇ! しゅぎょいぃ! しゅごくかけっこじょうず! ちぃろ、だいしゅき!」
カトルが親愛の情を表現するように、ピタリとくっつき、ヒイロの脚にぎゅっと抱きつく。
「あのね、あのね、こんどは、走ってきた向こうにもどるきょうそうだよ!」
ヒイロの雄姿を見てカトルのテンションは上がりっぱなしだ。
カトルが急かすようにヒイロの腕を引っ張る。
「ねぇ、ちぃーろ。よーいドンって言うからね」
話を聞いているのか、ノーリアクションのヒイロを前にカトルはテンションMAXのままだ。ヒイロならちゃんとカトルの話を聞いてくれていると、わかっているのだろう。
「じゃあ、いくよ。よーいドンッ!」
駆け出したカトルの背中を見ながら数拍間をあけて、ヒイロはやおら逆立ちになり、徐々にスピードを上げその体勢のまま爆走を始めた。
ターゲットを定めたように、全速力の三歳児を猛然と追ってくる、高速の逆立ち男の姿はシュールだった。
ヒイロにしては珍しくカトルへの配慮なのだろう。逆立ちで進んでいく方が、確かに普通に走るより随分とタイムは遅くなる。こんなハンデしか咄嗟に思いつかないヒイロは独特の感性をしているに違いない。それから、それを実行してしまえる体力と運動神経。
はじめのスタート時点めがけてカトルは夢中で走った。
その後を逆立ちで、あり得ない速さを見せるヒイロが追う。
カトルが自分を追い越してもおらず、前方にヒイロがいないことに気がつき、後方へ首をねじった。
「はわっわ!?」
逆立ちで猛然と追ってくるヒイロの姿は、なんらかの妖怪のようで怖いものがあるが、お子様カトルの眼には、とてつもなくカッコイイ存在に映っていた。見ているだけで、カトルの胸はワクワクと躍りだす。
カトルはこのヒイロの人間離れ(常人離れ)しているところが、本当に大好きだった。
ヒイロは地を出せば出すほど、他人から見れば、どうしようもなくシュールなのだが、カトルには憧れのヒーロー、スーパーマンなのだ。
競争が終わったあと、まだ、はぁはぁと途切れる息の中、カトルは嬉しそうに眼を輝かせて、
「あのね、ぼく、おっきくなったら、ひぃりょになるー!」
高らかに宣言したのだった。
「かなりのキャラ変が必要だな……」
止めはしないが、大正解なことを呟くヒイロの姿があった。
「いぃろ、あのね。ぼく、じてんしゃに、のれるようになりたいんだ。おちえてくれる?」
「補助輪なしで乗りたいのか?」
「うん!」
カトルの年齢ならまだ無理をして補助輪を外さなくてもよさそうなものだが。なにせ、まだ、三輪車がよく似合うお年頃である。
しかし、ヒイロはカトルの願いなら叶えてやろうと思った。
幸い、鈍くさそうに見えて、カトルは運動神経がいい。上手く行けば今日中に補助輪なしの自転車に乗れるようになるかもしれない。
「じてんしゃにのって、お庭をタンケンするんだ!」
確かに、この富豪オーラみなぎる広大な庭を散策することは、探検心を満たすことだろう。これだけの庭を遊び場と考えると、大冒険気分を味わえそうだ。
明らかに身体と自転車が右の方に傾いている。通常これでは即転倒だろう。それを後ろから自転車を持つヒイロが、力ずくで支え転倒を回避させているだけだった。
この日ヒイロは、夕暮れ前になるまで、カトルの自転車特訓に付き合ったのだった。
さて、カトルは補助輪なしの自転車に乗れるようになったのか。スパルタな指導がはいっていないことを祈る。
この日の昼。遠く離れたヒイロの家では、噂のトロワがヒイロの作ったお弁当を黙々と食べ、洗い物まですませていた。
見事、常と同じような過ごし方をし、お留守番をやってのけていたのであった。
トロワからすれば、単にいつもと変わりない日常を過ごしていたに等しい。恐ろしいほど落ち着いた三歳児だった。
カトルとトロワが出会うのはもう少し先。四歳の初夏のことである。
■FIN■
2015年10月9日 書き下ろし
■■■
ヒイロへ
こんにちは。カトルです。
ヒイロはお元気ですか?
このごろヒイロが お家に遊びにきてくれないので、すごくさみしいです。
はやくまた 遊びにきてください。待ってます。
カトルより
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もしもし、いぃおなの? ぼくだよ。かちょるだよ。
いぃお、元気? いしょがちぃの? お時間があったら、遊びにきて。ちぃろに会いたいよ。おねがいだよ。ちぃりょ。
「かならず、向かう」
「え? ひぃお、来てくれるの?」
カトルが驚いてそう言った時には、すでに電話は一方的に切れていた。
一方的にかけてきて、一方的に切る。そんなところも、カトルはなんだかヒイロらしい気がすると好意的に受け取っていた。
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ヒイロのスケジュールに無理をさせないように、今すぐにでも、すごく会いたい気持ちを押し殺して、できるだけヒイロにかかる負担や迷惑が小さくてすむように気遣い、カトルから手紙が送られてきた。
手紙と言う点が、ものすごく会いたいが、ヒイロを困らせたくはない幼いカトルなりの葛藤の証だった。
そんな心優しく思慮深いカトルを、ヒイロは心からけなげで可愛いと思う。
異様にクオリティーの高い「ヒイロ」の絵が手紙に添えられていた。美術的な素養もあるとは知ってはいたが、三歳児ということを感じさせない圧巻の似顔絵だった。マグアナック隊と言うカトル専属の親衛隊の中の絵心のある一人が描いたといっても通用しそうな代物だったのだ。上手すぎて、もう妙に笑えるレベルだった。
それから、手紙では漢字を使用していることにも驚いた。以前にもらった手紙はひらがなカタカナオンリーだったのだ。わずかな間に急成長しているようだ。
それに劣らぬ、著しい発達を見せる、自分の息子の異様な成長ぶりを棚上げしているヒイロ。
手紙を受け取ったときからスケジュールを調整していた。ヒイロはこの可愛いお子を無下にできないのである。
カトルは甘え上手な声色と物言いをするが、まったくの無自覚だ。意識的に人に甘えるのは、カトルにとっては苦手なことのひとつだった。
無意識で、人にこんな庇護愛やなにやらを刺激する仕種や声や口調をしているのだから、わざと甘え上手を狙った日には、どうなってしまうのだろう。そら恐ろしくもある。
そもそもヒイロはカトルの父、ザイードと親交があるのである。
同じ歳の子供がいるということで、なにげなくザイードがヒイロをカトルに引き合わせたところ、いやに、否、異常にカトルがヒイロになついてしまったのだった。
電話をくれたが、後日来るということを言っていると思っていた。それなのに、ヒイロは神出鬼没に近い形で、そっけない電話一本をよこし、いきなり現れた。
「ちぃおーーーー!」
思いがけずヒイロが来たとわかったカトルは、嬉しさで身体が弾け、動き出したように、全速力で廊下を走り抜け、猛ダッシュで大好きなヒイロに飛びついた。
抱き上げると、カトルはヒイロの首に腕を回して、親愛のハグをする。
「きゅうに来るから、びっくりしちゃった」
「電話で行くと言っただろ」
「ああ、ああ。あれって、すぐに来てくれるってイミだったんだ。『こんど』のことだとおもってたから、びっくりちたよ。でも、いぃおが来てくれてうれちぃー!」
こんな無条件で自分の来訪を喜んでくれるカトルという存在は、無感動気味のヒイロからしても、『喜』の部分を強く刺激されるものだった。
そうだ。この無償の愛を向けてくれることが嬉しくて、ヒイロはカトルにお願いされると、いそいそと時間を捻出し出向いてしまうのだろう。
「いぃおにもぼくと同じ男の子がいるってホント? 父上が言ってたんだ」
「確かに息子はいるが、妙に自立したやつだ。歳はカトルと同じ三歳だ」
自立した三歳児とは気になる存在だ。
「ぅへぇ~」
同じ年齢と聞いて、カトルはますます親近感を抱き、興味を持ったようだった。
「名前は“トロワ”だ」
「ちょろあ?」
「ああ」
ヒイロはカトルの舌足らずを放置している。自分も無抵抗に滅茶苦茶な呼ばれ方をしているから、そのくらいは気にするなということか。
「会ってみちゃいなぁ」
「無口だぞ」
「いぃおもぼくと、おはなちちてくりぇるよね。だから、きっと、だいじょうぶだよ」
ヒイロを見つめながら、カトルは純真なキラキラとした笑顔を浮かべる。
ヒイロは想像してみた。我が家の無愛想・無口な三歳児トロワと、表現豊かなカトルを引き合わせてみると、どんな反応が起こるのだろう。
カトルの言うがままに行動してしまう自分という存在があるので、トロワにも意外なことが起こるかもしれない。
「おっきい、いぃおと、ちっちゃい、いぃろ!」
無邪気にジャンプしながら両手の平を天に向かって突き上げる。カトルは大好きなヒイロが二倍になると思い、とても嬉しそうだ。
「あまり容姿は似ていない」
「ぐぇッ! ど、どうして!?」
残念さ満開でカトルは絶望的な表情を浮かべるが、こればかりはカトルの願いどおりにすることは、ヒイロにもできないことだった。
「カトル。おまえは外泊はできるのか?」
「がいはく?」
「自分の家以外のところへ泊まったことはあるのか? 夜になって泣きだしたりはしないんだろうな」
「父上が、いそがしくて、ご本をよんでくれなくても、ぼくはちゃんとねむれるよ。泣いたりしないもの。ひぃおのお家にお泊りしたときには、ちぃろがご本をよんでね。父上がいないときは、らちぃーどたちが、よんでくりぇうんだよ」
カトルは同年齢の男児よりも、おしゃべりが上手で多いようだ。このくらいの年齢なら、まだまだ、言葉数も少なく、単語で話して自己完結してしまう子も多い。すでに長い文章もうまく話せていた。
そのくせ、幼く感じられる。それはただ、カトルの子供色が強く出てしまう、その舌足らずな口調のせいだろう。
いぃろ、高い高いして!
ひぃお、おウマしゃんになって!
ちぃろ、ねんどであそぼ!
いぃお、ご本よんでー!
ひぃりょ、お歌うたって!
ちぃりょ、おんぶちてぇ!
いぃりょ、ブロックーッ! カッコイイものちゅくろぉ!
天真爛漫に矢継ぎ早に提示されるカトルの要求を全てのむヒイロ。
ヒイロは若干三歳児であるカトルの言いなりだった。
人にはわからないだろうが、ヒイロはただただ喜びをもって、カトルからの可愛いお願いをすべて飲む、従者に徹していた。ヒイロはこうみえてカトルとの時間を楽しんでいるのである。カトルと過ごす時間は、ヒイロにとってこれ以上はないという至福の時だった。
常の自分のマイペースを崩さない、ヒイロの姿を知るものが見れば目をむくことだろう。
どうでもいいが、奇跡を感じるほど、カトルは一度として正しく「ヒイロ」と言えていない。ありとあらゆる発音で間違い続けている。ここまで来ると、いっそ神がかり的で感動に値する。呼ばれているヒイロが放置し、とがめないのだから、お子様カトルはこれでいいのだろう。
「ちぃいお! かけっこしよう!」
庭の一部にスタートとゴール地点を設け、かけっこが始まった。
開始早々、ヒイロがブッチギリの速さを見せつける。ぐんぐんカトルの姿が小さくなった。
この男、子供相手であっても手加減や一切の妥協をしないのだ。
ヒイロがゴールしてから、遅れに遅れてカトルなりに一生懸命、てってけてってけ、走り続けている。
その絶望的なスピードの差を見せつけられても、めげずに最後まで全力疾走してくるお子を、ヒイロはけなげな初奴だと思い、見つめていた。
「ぃいおーーーーッ!」
がばぁっーとカトルは走ってきた勢いのままにヒイロに抱きついた。息を切らしながら、ニコニコ笑っている。嬉しそうに見上げてくる、穢れなき瞳が眩しすぎる。
天使というものがもし実在したら、きっと、カトルのように清らかで美しいのであろうか。そして、カトルは天使の存在を凌ぐほどに言動が愛らしい。ふわふわと揺れる白金の髪。白くて柔らかなきめ細かな肌。純真な美しい碧の瞳。ひだまりのように穏やかであたたかな心象。心根の純粋さと同じく心身ともに麗しかった。
「いぃおー、すごいねぇ! しゅぎょいぃ! しゅごくかけっこじょうず! ちぃろ、だいしゅき!」
カトルが親愛の情を表現するように、ピタリとくっつき、ヒイロの脚にぎゅっと抱きつく。
「あのね、あのね、こんどは、走ってきた向こうにもどるきょうそうだよ!」
ヒイロの雄姿を見てカトルのテンションは上がりっぱなしだ。
カトルが急かすようにヒイロの腕を引っ張る。
「ねぇ、ちぃーろ。よーいドンって言うからね」
話を聞いているのか、ノーリアクションのヒイロを前にカトルはテンションMAXのままだ。ヒイロならちゃんとカトルの話を聞いてくれていると、わかっているのだろう。
「じゃあ、いくよ。よーいドンッ!」
駆け出したカトルの背中を見ながら数拍間をあけて、ヒイロはやおら逆立ちになり、徐々にスピードを上げその体勢のまま爆走を始めた。
ターゲットを定めたように、全速力の三歳児を猛然と追ってくる、高速の逆立ち男の姿はシュールだった。
ヒイロにしては珍しくカトルへの配慮なのだろう。逆立ちで進んでいく方が、確かに普通に走るより随分とタイムは遅くなる。こんなハンデしか咄嗟に思いつかないヒイロは独特の感性をしているに違いない。それから、それを実行してしまえる体力と運動神経。
はじめのスタート時点めがけてカトルは夢中で走った。
その後を逆立ちで、あり得ない速さを見せるヒイロが追う。
カトルが自分を追い越してもおらず、前方にヒイロがいないことに気がつき、後方へ首をねじった。
「はわっわ!?」
逆立ちで猛然と追ってくるヒイロの姿は、なんらかの妖怪のようで怖いものがあるが、お子様カトルの眼には、とてつもなくカッコイイ存在に映っていた。見ているだけで、カトルの胸はワクワクと躍りだす。
カトルはこのヒイロの人間離れ(常人離れ)しているところが、本当に大好きだった。
ヒイロは地を出せば出すほど、他人から見れば、どうしようもなくシュールなのだが、カトルには憧れのヒーロー、スーパーマンなのだ。
競争が終わったあと、まだ、はぁはぁと途切れる息の中、カトルは嬉しそうに眼を輝かせて、
「あのね、ぼく、おっきくなったら、ひぃりょになるー!」
高らかに宣言したのだった。
「かなりのキャラ変が必要だな……」
止めはしないが、大正解なことを呟くヒイロの姿があった。
「いぃろ、あのね。ぼく、じてんしゃに、のれるようになりたいんだ。おちえてくれる?」
「補助輪なしで乗りたいのか?」
「うん!」
カトルの年齢ならまだ無理をして補助輪を外さなくてもよさそうなものだが。なにせ、まだ、三輪車がよく似合うお年頃である。
しかし、ヒイロはカトルの願いなら叶えてやろうと思った。
幸い、鈍くさそうに見えて、カトルは運動神経がいい。上手く行けば今日中に補助輪なしの自転車に乗れるようになるかもしれない。
「じてんしゃにのって、お庭をタンケンするんだ!」
確かに、この富豪オーラみなぎる広大な庭を散策することは、探検心を満たすことだろう。これだけの庭を遊び場と考えると、大冒険気分を味わえそうだ。
明らかに身体と自転車が右の方に傾いている。通常これでは即転倒だろう。それを後ろから自転車を持つヒイロが、力ずくで支え転倒を回避させているだけだった。
この日ヒイロは、夕暮れ前になるまで、カトルの自転車特訓に付き合ったのだった。
さて、カトルは補助輪なしの自転車に乗れるようになったのか。スパルタな指導がはいっていないことを祈る。
この日の昼。遠く離れたヒイロの家では、噂のトロワがヒイロの作ったお弁当を黙々と食べ、洗い物まですませていた。
見事、常と同じような過ごし方をし、お留守番をやってのけていたのであった。
トロワからすれば、単にいつもと変わりない日常を過ごしていたに等しい。恐ろしいほど落ち着いた三歳児だった。
カトルとトロワが出会うのはもう少し先。四歳の初夏のことである。
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2015年10月9日 書き下ろし
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プロフィール
HN:
たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。
小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!
「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★
しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。
カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!
ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)
我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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