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~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~    
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【 HUA HUAN 】

トロカトの本編序盤のまだ、
想いが通じあっていないときの、
もどかしいせつないお話になります。

本編ネタがお好きな方。
序盤のトロワの戸惑いがお好きな方。
けなげなカトル様お好きな方。

そんなかたにおすすめです。

序盤なので、トロワがまだ、カトルに心を開いていないので、
カトルが、より、けなげにみえるのではないかと(笑)

また、お読みいただけましたら、
感想や拍手などしてやってください。
ひと言感想でも結構です(笑)

やる気の糧になりますし、元気もでますので、
拍手や感想おまちしておりまーすvv

ではでは、「本文を読む」からから、どうぞ!


HUA HUAN


「やあ、また逢えたね」
 トロワはトレーラーの運転席から、身軽な動作で降りたのと同時に声を掛けられた。
 笑顔を湛えながら近づいてくる、柔和でいて凛然とした不思議な雰囲気を持った少年。それは、初めて少年を見たときから変わらない印象だった。
「君もこの船に乗ってたんだね」
 その少年  カトルがさも嬉しそうに近づいてくる間も、トロワは憮然とした表情のままた立ち尽くしていた。あの時と同じ無言の拒絶を示す。
「もしかしたら、君もこの経路を取るんじゃないかってきたいしてたんだ」
 あまりにも無防備で無垢な姿は、トロワに困惑という感情を抱かせた。
 気を抜けば何かペースを乱されるような気がする。そのことは、もう学習済みであった。
「目的は同じだろ?」
「…………」
「よかった。君ともう一度逢って話がしたかったんだ」
「お前と俺が何を話す必要がある」
 拒絶を露わにした瞳にもめげず、友好的に接してくる少年の健気な姿に、煩わしさを耐え切れなくなったトロワが、重い口を開いたのだ。否、開かされたのだろう。
 この少年はトロワが自分となれあうつもりはないと、わからないのだろうか。
 疑問からトロワは、不思議そうに小首を傾げ覗き込んでくる少年の、深く澄んだ大きな碧い瞳を見つめた。
 それはカトルが望むような穏やかな想いから来るものではなかったが、それでも顔にかかる長い前髪から覗く、ダークグリーンの瞳に、初めて映る自分の姿を見て、カトルは心が弾むのを感じた。
 カトルの屋敷に居た時でさえ決して、他者を受け入れず、ただ、全てを観察するように冷淡な、瞳を向けていた。そんなトロワがカトルと初めて瞳を合わせたのだ。
 静かで優しいとは言えない冷たい声でさえ、トロワから発せられた自分に対するものだと思うと、カトルは鼻の奥がつんとするような感覚を覚え、きゅっと瞳を閉じた。
 カトルはそのまま、変に瞳が潤んでしまわないように、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「僕は普段、同じくらいの年齢の人と話したことがあまりないから……。それに君は僕と同じ操縦者(パイロット)だろ。地球に降りてきて仲間に逢えるなんて思ってもみなかった。いろいろ聞いてみたい事があるんだ」
「同じガンダムに搭る操縦者であることは確かなようだが、俺は仲間になった覚えもないし、それを必要ともしていない。あれこれ詮索されるのは迷惑だ」
「詮索だなんて、そんなつもりじゃないんだ」
 棘のあるトロワの言葉に、緩んでいたカトルの表情が曇る。
「僕はただ、君と友達になりたかったんだ」
 無表情に握りしめるカトルの拳が微かに震えた。
 それでもトロワを捕らえた瞳は逸らそうとしない。
「友達だと……」
「そうさ。こうして二度も出逢うことが出来たんだ。きっと僕達は共鳴してるんだよ」
 カトルはそう言うと、はにかみながらも口唇の両端を上げて、綺麗な微笑をつくった。
「おかしな事を言う奴だな」
 その儚げな姿さへトロワには自分の何かを逆撫でするように感じる。ざわめく胸を確認し、トロワは服の上から心臓の辺りを握りしめた。
 共鳴とはとても言えない。これは不協和音だ。トロワはこれ程、苛々としたことはなかった。カトルはそう感じていないのだろうか。
「だって。君のフルートと僕のバイオリンも、綺麗に響き合っていたじゃないか」
 凛とした、強い空気を纏うようにカトルは応える。
 しかし、カトルの告げてくる言葉のひとつひとつ、想いのひとつひとつがトロワには理解できない。ただ、その全てが息苦しく感じられる。
「また二人で演奏ができるかな。僕は君のフルートの音色。とても、あたたかくて、優しくて、大好きだよ。どうしたら、あんな素敵な音が奏でられるんだろうって、びっくりしたもの……」
 
   限界だ。もう、これ以上は堪えられない。
 笑い交じりに熱心に語ってくるのを耳にしたくなくて、トロワは踵を返そうとした。
 そのトロワの袖を掴むと、慌てて引き止めるカトルは言葉を繋ぐ。
「だから、きっと僕達、友達になれるよ。そうだろ、トロワ?」
 最後の問い掛け。
 カトルから穏やかな声と共に、差し出された握手を求める右手。それさえもトロワは、反射的に払い除けた。
 弾かれた右手を左手で握りしめるカトルの、眉を寄せるように瞳を見開いた、その表情を見ないように、トロワは視線を反らせる。
 何処までも真っすぐに見つめてくる瞳に、どのような答えを返せばいいのかわからないトロワは、逃げるように、その場を立ち去るしかなかった。
「……ト、ロワ……」
 微かに聴こえた声は、もう自分を追って来ようとはしなかった。
 今振り向けば、カトルはどんな瞳をしているのだろう。何かを期待しているような自分に、トロワは苦し気に舌打ちすると足を速めた。
 遠ざかっていくトロワの後姿を、カトルはただ、見つめていた。
 どうすればいいのかわからないのは、カトルも同様であったから。カトルには見つめることしか出来なかった。
「僕は……こんなにもトロワに、嫌われているんだ……」
 力なく言葉にすると、それが酷く自分を傷付けるものであると、カトルは動揺した。
 どうして胸が痛むのか。それすらわからずに、赤くなってもいない右手を茫然と撫で続けた。
 初めてのトロワとの接触は、こんな、じんとした痛みだった。
 初めて、人の瞳を見て、声を聴いて、綺麗だと思いました。
    なんて綺麗な、なんて深い、なんて哀しい。
 どうしてこの人は傷ついているのでしょうか。
 どうしてこの人は泣いているのでしょうか。
 怯えているのは、僕でしょうか。
 それとも、この人でしょうか。
    知らない。
    こんな感情は知らない。
    ただ、心細く、苦しいのです。
 僕に、その答えは与えられるのでしょうか。
■1998年3月15日【初出】■

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HN:
たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。

小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!

「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★

しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。

カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!

ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)

我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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