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~来タレ我軍曹!×4受限定軍曹&4受大臣憩いの場★~    
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『懐抱 ~かいほう~

トロワ×カトル


短く何気ないトロカト小説です。
こういうお話をアップするのって反応がないのでは。。。
と思って本当にドキドキします。
もやは、ハラハラ?(笑)

ちっちゃなちっちゃな出来事からでも
自己補完でときめきを作り上げられる
ツワモノさんが読んでくださいますように;;

こんな、なんてことないお話でもお嫌いじゃなければ
拍手やコメントしてやってくださると本当に嬉しいですv

本文を読むから、はじまりますv
どうぞー♪



『懐抱 かいほう


 朝靄が掛かる早朝に、トロワとカトルは湖のほとりの遊歩道に来ていた。
 付かず離れずの位置を保つように並んで歩く二人の歩調は、ひどくゆっくりとしたものであった。
 トロワはカトルの歩く速度に合わせ、ゆったりと歩を進める。カトルはそんなトロワの半歩後ろに身を置いて、その横顔に微笑みかけた。
 表立っての表情の変化に乏しいトロワにも、不快な顔もせずカトルは愉しげに語りかけている。今朝の散歩も誘ったのはカトルのほうからだった。二人はまだ眠っていたデュオ達三人を残しコテージを抜けだしたのだ。
 まだ、トロワとカトル二人の他には人影もなく、しっとりとした木々に鳥の鳴き声と、落ち葉を踏む音だけが存在していた。
 
 カトルの視線は自然とトロワを追っていた。
 すらりとしたトロワは、カトルと比べて手足も長く、意識してしまうと、なんだか横に並ぶのが恥ずかしくなることがある。輪郭でさえ、まだ少し柔らかな丸みのある線の残るカトルと比べトロワは綺麗に……。
 ふわりとした中性的な容姿も、声変わりを終えてないような高めの声も、人を安心させる要因のひとつになっているということにカトル自身は気付いてもいなかった。
 同じガンバムのパイロットの四人にカトルは、自分も皆のようになりたいという憧れを抱き、その中でもトロワは特別それを強くカトルに感じさせていた。
 比べてしまうと限が無くて、カトルは溜め息をつきながら何気なく自分の手のひらを見つめる。きっとトロワの手のひらは自分のものより大きいのだろう。
 カトルは左の手で撫でるように、右手を握り締めた。そして、トロワの片手にカトルはそおっと手を近づける。
 あと少しで指先が触れようとしたとき、近くで鳥の羽音が大きくして、カトルは驚いて肩を竦ませ、手を引っ込めた。
 後ろ手に両手をもぞもぞ動かし、カトルは自分が緊張していることを知った。
 不意に立ち止まったトロワは、微かに紅いカトルの頬を見て、
「どうしたんだ、カトル」
 そっと、その頬に触れる。
 カトルはびくりと躰を震わせた。
 事も無げに触れてくるトロワに、カトルの顔はますます朱を濃くする。
 微かに触れる指先は、温もりよりも、むず痒さをカトルに与えた。
 耳の側にトロワの指先を感じ、ぞわっとした感覚が波立つように背中まで走った。カトルはくすぐったさに耐え切れず身を縮混ませて、眼を強く閉じてしまった。
 鳥の囀りが聞こえ、カトルは周りを囲む木の枝に視線を向けた。ぐるっと視線を巡らせて、その鳥の姿を追うが見当たらず、不思議そうな表情のままで目線を戻すと、トロワの視線とぶつかった。

 揺れる緑の葉にカトルが意識を向けているときに、トロワは揺れる白金の髪を見つめていた。
 瞳を大きく見開いて野鳥を探すカトル。
 穏やかな瞳でそれを見守るトロワ。

 昔に見た深い緑の双眸は変わることなく。
 カトルはそんなトロワの瞳が好きだった。
 見詰められれば、憧れのぶんだけ居心地が悪い。

 とろけそうで、こわい……。

 朱色の取れぬ頬のまま、カトルが慌てて少し困ったような、はにかんだ笑顔を向けると、トロワは少し眼を細めた。

 カトルのほんの些細な仕種さえ、大切にしたいと思うようになったのは、一体、いつからだったのか。カトルとの出逢いによって、トロワは感情というものは自然と湧き上がってくるものであると知った。
 あたたかだと感じる安らぎも、寒いと感じる孤独さえも。与えてくれるのはカトルしかなく、取り去ってしまえるのもまたカトルしかなく。トロワはカトルと共にあり、初めて人として生きていると感じていた。

「一体どこで鳴いているんだろう?」
 トロワならば正確な位置を掴めているに違いないと思ったカトルは、尋ねながらもう一度目線を漂わせた。
 しかし、いつまでたっても、カトルの待つ返事は与えられなかった。
 いつも静かなトロワだが、質問の返事すらしてくれないなんて。なにも聞いてもらえていなかったと思ったカトルは、じっとすねるようにトロワを見たが、いつもと同じで表情が読めない。
「もう、トロワ、聞いてるのっ?」
 カトルは少し頬を膨らませた。
「ああ、聞いている」
 トロワの口調には微かな笑みが含まれていた。
 ころころと変わるカトルの表情はどこを切り取ってみてもトロワには新鮮で、珍しく怒っているらしいカトルにも興味をそそられた。
 カトルはあくまでも落ち着いた様子のトロワを前に、恥ずかしくなってくる。こんな朝早くから自分の我が儘で付き合ってもらっているにもかかわらず、子供じみた態度をとってしまって。
 こんな自分はトロワに嫌われてしまうかも。
 だけど……。
「トロワなんて知らないっ!」
 ぷいっとトロワから顔をそむけた。

 カトルは不安を覚えているのに、だからといって、素直に機嫌を直すこともできない。すねた気持ちのままで強がるように、トロワからくるりと背中を向けた。

 立ち去ることは怖くて、振り向くことは照れ臭くて、身動きがとれずに、唇を尖らせてカトルは俯く。
 勢いで取った言動の収拾の付け方のわからないカトルは、どうしてこんなことをしてしまうのか自分に呆れていた。こんなことの為にトロワを誘ったわけではなかったのに。すぐに後悔が襲う。

 どうも自分のせいで機嫌をそこねてしまった、そんなカトルの姿さえ、トロワにとっては愛しさが込み上げるものだった。白い肌に細い首筋、心細げな背中には胸を突かれた。
「……カトル」
 宥めるように名前を呼んでトロワはカトルに近付く。
 引き寄せられるように、トロワはカトルをそっと後ろから抱き締めた。
 トロワの突然の抱擁に驚いたカトルは息を止めた。
 少しの間を置き、
「……ご、めん……なさい」
 回されたトロワの腕にためらいがちに手を添えて、風の音にでも掻き消されてしまいそうな小さな声を出した。
 カトルは自分が作ろうとしていた時間とは、きっと、こういう瞬間であったのだと思い出した。



■FIN■



初出 1997年「リーブミー」という本から
のものに加筆訂正しました

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たみらむゆき軍曹&碧軍曹
性別:
非公開
職業:
カトル受専門の夢想家(野望)
趣味:
カトルいじり・カトル受妄想
自己紹介:
むゆきと碧
2人のカトル受限定軍曹が
同志を募って
集って憩ってしまう場を
つくろうと
もくろんだしだいであります。

小説や絵を
UPするのであります。
日記は書く気なし!
(そして、
まともなプロフィールを
語る気もなし。。笑)
軍曹はカトル・ダーリンズ
だいちゅきトークが
したいだけでありますから!

「我軍曹ッ!」
の名乗り随時募集中v
いつか、軍曹の集いを
したいものでありまっす★

しかして、
「なぜ軍曹?;」と、
大半の方に思われてるだろう。。

カトル受最前線で戦い続けるため
出世しすぎて
外野にはいかないからの
万年軍曹であります!

ちなみに最近急に
自分のことを、
「4受大臣」とも名乗るように。
「4受大臣補佐官」など(笑)
こ、これは進化なのか!?(笑)

我が魂、
カトル受とともにあり★(ビシッ!)
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